トレードマークだったヒッチコック、もしくは中世の芸術家的ヘア・スタイルにバリカンを当てみそぎをした(ジャケット内側に断髪の光景が!) この喜劇役者兼、サンパウロ・エクスペリメンタル系MPBシンガー・ソングライター - カルロス・カレカの新作は何とピアノと声のアルバム。自身がピアノで作曲するということで、このコンセプトを思いついたといいます。ストーリテラーのように声色を変えながら唄う曲もあったので、アルバムを通して聴かないと、と当初お試しで入荷したタイトル、素晴らしさに如何にびっくりした事か...穏やかに円熟味のある声で唄う曲が特に素晴らしく、合間合間に”役”になりきった七色の声色が顔を出すという配分です。このアルバムでは素晴らしいピアニストを7人起用しているのですが、アンドレ・メーマリが弾く2曲は20世紀前半に活躍したドイツの劇作家ベルトルト・ブレヒトの作品のポルトガル語歌詞ヴァージョン。そして'03年にアヒーゴ・バーナベーのオペラに参加するため書き下ろされたという"minha musica"にはイマジナリーな音像のアルバムが大好評だったパウロ・ブラガのピアノに、シコ・ブアルキがゲスト・ヴォーカルで参加。マリア・ヒタのアルバムでの演奏で知られるチアゴ・コスタ、女流ピアニスト - アナ・フリードマン、m-8"todo cuidado e pouco"ではアコーディオンで培った鍵盤さばきをピアノで見せるガブリエル・レヴィと共にアヒーゴ・バーナベーが物語の登場人物の様にゲスト参加。サンパウロを中心に交響楽団との演奏もするカリン・フェルナンデスまで、ポエティックな佇まいのカルロス・カレカ歌曲がピアニストそれぞれのリリカルな音使いで彩りを更に深くした傑作アルバム。最近リリースされた、ダニエラ・アルカルピやテレボッサがこぞってカルロス・カレカ曲を採り上げているのも頷けます。
"minha musica" *主に断髪シーンなので衝撃映像が苦手な方は見ないで下さい。