ロックのカタルシスを感じさせるのには充分すぎるほど魅力的な憂いを帯びたハスキー・ヴォイス。大平原広がる出身地リオ・ネグロの原風景がそうさせるのか、疾走するメランコリアを書かせたら右に出るものが居ないくらいのメロディー・メイカーとしての才覚。4年ぶりに制作されたスタジオ・アルバムは、初めて設立した自身のスタジオでレコーディングされたもので、デジタル機器とコロナ禍によって、人と人のコミュニケーションが益々暗号化されてゆくことへの危機感をテーマに制作。音の方でも打ち込みの電子音と、ルーカス・アルゴメド(cello)ら弦楽三重奏、そして同郷のカルリ・アリスティーデ(eg/パラモ)、マルティン・カサド(drs)ら生楽器の息遣いを融合、見事に物語性に富んだ情景を描きだしています。最終曲m-10"Baguala l"では現代社会を皮肉るように、携帯電話にヴォコーダーを掛け聖歌調にアレンジ。レジェンド・ミュージシャンのリト・ビターレ(p)がm-6"Hoy no fue ayer"に、ラッパーのWOSがm-7"Comen"にそれぞれゲスト参加。