ダニロ・カイミとの共演盤で一気に高い評価を集め、以来アメリカン・ジャズ・スタンダードに傾倒した作品を制作したり、近年では女性サンバ・シンガーのグラッサ・ブラガをフィーチャーした作品や、サンバ作家ジェルマーノ・マチアスをトリビュートしたコンピレーションを制作したりと、20年以上に渡り20を超える作品を発表するなど、非常に多才で多作なマヌ・ラフェール。最新作は80歳を迎えたカエターノ・ヴェローゾの歌曲集、本人をゲストに迎えて。
芸達者な音楽家マヌ・ラフェールがカエターノ・ヴェローゾをスウィング・ジャズで解釈したトリビュート盤
マヌ・ラフェールが通う幼稚園にカエターノ・ヴェローゾが訪れ、その際多大な衝撃を受けた記憶が、その後の音楽家としての歩みを決定づけたといいます。かつてカエターノ・ヴェローゾのバックでギターを弾いていたルイス・ブラジルと共演作を発表したのも、自身の原点を見つめた結果なのかも知れません。冒頭、ネイマール・ヂアスのカイピーラ・ギターに導かれて"Na asa do vento"を歌うその声が、随分似た声質だと思ったらカエターノ本人でした。このジョアン・ド・ヴァーリ=ルイス・ヴィエイラ作の楽曲や、ジョン・ピザレッリのギターをフィーチャーした"Marcianita"、ボサ・ノヴァに解釈したウィルソン・バチスタ作"Largo da Lapa"など、カエターノがショーのレパートリーにしているものも含み、ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブの音楽監督も務める7弦ギター奏者のスワミ・ジュニオールがプロデュース、優雅と洗練のアコースティック・スウィング仕立てとしています。トミー・ドーシー・オーケストラやベニー・グッドマンら伝説のジャズマンと共演しているケン・ペプロウスキーのクラリネットをフィーチャーした"Onde Andaras"(1968)をはじめ、"O Ciúme"(1987)から、ブルーナ・カランがゲストvo.で参加し、ゆったりとスウィングするヴァージョンが新鮮な"Os Argonautas"(1969)、"Não Identificado"(1969)、ゲスト参加するマーク・ランバート(vo,g)作の英語詞ヴァージョンで収録した"Illusions (Gravidade)"(1975)などトロピカリア期〜ジョーヴェン・グアルダの頃のカエターノ作品を落ち着きのある柔かいタッチで見事に解釈。ヴェント・エン・マデイラ/ブラジル・ジャズ・シンフォニカの鍵盤奏者チアゴ・コスタのピアノとハモンドの音色が嵌まっています。