ラモン・アシャラの歌曲集に、セバスティアン・マッキらの未発表曲を採り上げたアルバムと、すっかり川沿い音楽を歌う女性としての印象が深いセシリア・パールですが、最新作では20世紀前半に書かれたアルゼンチン・フォルクローレの古典を名うてのギター奏者ふたりと打楽器レスで叙情的に、時に颯爽と解釈。
アルゼンチンが経済発展を遂げ、屈指の富める国だった20世紀初頭。多くの文芸が生まれ、二行連句の手法で詩人たちは歌を書きました。カルロス・ロペス・ブチャルド=グスタボ・カラバジョ、アルベルト・ヒナステラやヒラルド・ヒラルディ、民間伝承まで100年近くの時を経て、現代の音楽家たちによって掘り起こされるサ(za)ンバやビダーラの様式を持った古典たちが10篇。レパートリーの採択に関しては、文芸的で詩的価値の高さに重きを置き、これらで描かれる叙情風景を諭すように、慈しむようにセシリア・パールが歌います。歌伴にはピアノもバンドネオンも打楽器も登場せず、注目を集める若手有望株マティアス・アリアスの8弦と、ジャズ方面でも活躍するエルネスト・スナヘールによる2台の生ギター・アンサンブルのみを背景に、叙情溢れるメランコリアから微睡みを誘う鎮魂歌、
ギターが刻む現代的なテクスチャーまで、アルゼンチンの歴史的文芸をアコースティックに表現したアルバム。