現代ブラジル音楽を文芸の域に昇華する、ピアノを弾き歌う哲学者。ゼー・ミゲル・ヴィズニキの新譜到着!
本作冒頭"O jequitibá"でゲスト・ヴォーカルにて参加するナー・オゼッチとの共演盤「Ná & Zé」(2015) リリース後、鉱業に関する書籍を共著(2018)、そしてベテラン歌手アライヂ・コスタがヴィズニキ歌曲を歌ったアルバムの制作(2020)を経て、パンデミックの渦中はスタジオに篭り、本アルバムの制作に没頭していました。11曲中、10曲は名プロデューサー、アレー・シケイラが制作を担い、ヒカルド・ヘルス(vln)が参加するm-8"Sereia"のみ、トゥリッパと共に来日した経験を持つマルシオ・アランチス(g,b,syn) が制作。アンドレ・メマーリ所有のスタジオで録音された、たおやかなピアノの音色に載せて、熟味を効かせた諭すようなゼー・ミゲル・ヴィズニキの歌声、そして客演する様々な音楽家たちと滋味深く詩的な世界を繰り広げていきます。ご存じの方も多いかと思いますが、ヴィズニキはサンパウロ大学文学部の上級教授でもあり、ポルトガル語文学のスペシャリスト。m-2"Chorou e Riu"では、かつてのボサ・ノヴァ名曲"Meditãtion"(瞑想) で言及される一節を、現代ブラジル社会に置き換え<愚か者の支配する時代>を風刺。モニカ・サウマーゾ(vo)とデュエットしています。そして女性S.S.W.として作品も発表している娘のマリナ・ヴィズニキと共作共演したm-3"Roma"、m-10"Avesso Vão"に加えて、マリナの妹でスタイリストとして活躍するイアラに捧げたm-6"Iara"や、バイアーナ・サウンドシステムのメンバーらが参加したm-5"Estranha Religião"(奇妙な宗教という意) は、息子のギリェルミ・ヴィズニキが歌詞を手がけるなど、芸術一家が総出でこの深みを持った音楽作品を作り上げています。2022年に92年の生涯を閉じたエルザ・ソアレスの情熱的な唄声をサンプリングしたm-7"O Chamado E A Chama"に、予てからの盟友パウロ・ネヴィスやアルナルド・アントゥネス、ルイス・タチらとの変わらぬコラボレイトもあり、チェロとの共演盤がここ日本でも評判となったセルソ・シン(vo)や、ダニ&デボラ・グルジェルのメンバーとして複数回の来日経験を持つチアゴ・ビッグ・ハベーロ(drs) 、ジョアン・カマレロ(g)やジアン・コヘア(7弦g)、アレシャンドリ・ヒベイロ(cl)、セルジオ・ヘジ(drs)ら腕に覚えのある若手の演奏者も挙って参加、単独では5作目となる本アルバムに彩りを添えます。