アルゼンチンのタンゴを基盤に持つギター奏者フアン・ロレンソと、現代フォルクローレからロックまで幅広いフィールドで活動してきた女性シンガーのバルバラ・アギーレ。ギター一本と混声ハーモニー、繊細で静かなるアンサンブルの中、鮮やかに律動するタンゴやコンテンポラリー・フォルクローレのリズム。ハープや弦楽四重奏のゲストも。2020年度カルロス・ガルデル賞ノミネート作品。
9枚のアルバムをリリースしている著名なタンゴ・グループ - 34プニャラダス、現ボンベイBs.As. のメンバーであり、造形作家としての顔も持つフアン・ロレンソと、ソロをはじめオーケストラと、カルテットで、女性歌手として多彩な活動を行ってきたバルバラ・アギーレ。この二人がデュオを編成したのが2014年。本作は結成から5年後の2019年に制作されたアルバムで、ほぼ全ての楽曲をフアン・ロレンソが自作。雑踏のノイズにはじまるタンゴの"Virgencita del trasnochador"から、バルバラ・アギーレが作ったカルナバリート"Vientos de Carnaval"、サ(za)ンバ、チャカレーらなどのフォルクローレ様式に則った優しさの滲む楽曲たちを、繊細かつコンテンポラリーなタッチで快演。慈しむようなバルバラの歌声と、フアンのティピカルなタンゴ歌手を思わせる重みを持った声のコントラストが秀逸です。ソロ・ギターの技法で旋律と和音感を共存させた歌伴から、ハープ奏者を迎えた"Gurisito Navegadador"、"La Sombra"のようなボデイ・パーカッションや洗濯ホースのうなる風音の効果的な使用、バンドネオン奏者を迎えた"Contramilonga"、弦楽四重奏を迎えた劇的なタンゴ"De ceniza y de carbon"まで、少ない音数に集約された多彩な表現と丁寧な手触りが伝わってくる好盤。