かつて神童としてデビューしたアイルトン・モンタホイオスの新作は古いサンバやフォホー、エクスペリ-サンバをエレガントで洗練された組曲形式にリノベイトした革新的な一枚。
ヘヂ・グローボの歌唱コンテスト形式のTV番組「ヴォイス・ブラジル」へ初登場時は16歳、ファイナリスタとなり全ブラジル中の注目を集めるなか、はじめて自らの名「アイルトン・モンタホイオス」を冠したアルバムを発表したのは2017年、22歳の時。北東部レシーフェの生まれで、音楽活動のためにサンパウロに移り住んだアイルトンの創作活動は、常に自らが何処から出づれ、如何方へ赴くのかを証ているかのよう。今作ではヴィラ=ロボス"O Trenzinho Do Caipira"〜エドゥ・ロボ"Viola Fora De Moda"~"Upa Neguinho"〜シヴーカがレパートリーにしていた北東部音楽へと繋ぐメドレー(組曲)形式で、"Mitica""Lirica""Epica"の三部構成に仕立てています。他にカピナンやゴンザギーニャ、ジョアン・ド・ヴァーリ、現代のエクスペリ-サンバの音楽家キコ・ヂヌッチなど、全26の楽曲を繋げ合わせて取り上げています。この編曲、ホドリゴ・カンポス(g)によるアレンジの妙が冴えていて、フルートやギター、カヴァコの神秘的な音色、シンセ・ベースも用いた斬新なリズムの構成法、コーラスワークに至るまで、既知の楽曲と大きく印象を変える大胆なアレンジを施しています。レシーフェ、サンパウロ、自身が見てきたブラジル音楽の景色を豊富な発想と技法で塗り替えんとする驚きに満ちたアルバム。