サンパウロに起こったアンチ・ディーヴァの流れ、として新聞記事にトゥリッパと並び紹介されたこともある女性S.S.W.アンドレイア・ヂアス。個性ある参加ミュージシャンたちを迎えて制作された前三作と異なり、今回はトリビュート。トロピカリズモ期に活躍したヒタ・リーの「Build up」('70)、「Hoje e o primeiro dia do resto da sua vida」('72) の収録曲から、アンドレイアが自身の思いを籠めた歌詞を書き加えた名曲m-5"Ovelha Negra"、オス・ムタンチス時代の楽曲m-8"Gloria ao Rei dos Confins do Alem" に、オス・ムタンチス名義ではリリースされることのなかったm-3"Beija-me Amor"、'73年当時ヒタのプロデューサーであったアンドレ・ミダニによって出版差し止めとなったm-6"Bad trip" のオリジナルに忠実なヴァージョン... ヒタ・リーのB面曲、知られざる良曲にスポットを充てるべくアンドレイアとジャーナリストのマルクス・プレトがレパートリーを厳選、オフ・マイクでピアノを録ったり、カイピーラ・ギターをシタールのように用いたりと、70年代ヴィンテージの雰囲気に忠実な幻想的サイケ・フォーキーのサウンド・メイクをロック・バンド - ウ・テルノのチン・ベルナルデスが担っています。桃源郷に佇む蓮華草の花々のように、気怠い艶気と繊細な感受性の双方を併せ持ったアンドレイアの唄声と、ヴィンテージな温もりがよく似合っています。