ブラジル北東部ペルナンブーコ州出身で、ジョビンやドリヴァル・カイミのハーモニー構築術に夢中になり、マラカトゥやコーコなどの地域ルーツ・リズムと自らの持つ詩的エッセンスを融合、現世代ならではの新しいブラジル音楽を提示してきたゼ・マノエウ。大洋レコード・伊藤がライナーノーツを担当した1stをはじめ、今までに三枚のアルバムが国内盤としてリリースされています(1st:ディスク・デシネ、2nd,3rd: コアポート)。女性歌手や多彩なゲストを迎えて制作されたトリビュート / セルフ・カヴァー作やDVDを除けば、オリジナル・アルバムとしては4作目となる「Coral」(2024)、一際極彩を放つ傑作がアナログLP・クリア・ヴィニール仕様で入荷!
夢の中でドリヴァル・カイミが"コーラル"と歌っていたことからb-5"Coral"、そして本作の着想を得たと言います。半ば偉人の啓示を受けて始まったアルバム制作、鮮やかに赤くオーバーラップされたカヴァーは映画のように物語性を持たせたかったと語る本作の朝焼けで全てが赤く染まる瞬間を表しています。冒頭のメロウなR&B、a-1"Golden"から音楽好きの関心を惹きつけて止みません。ドナート親子のシンセ作でもフィーチャーされていた、ブラジリアン・アメリカンの女性歌手ガブリエラ・ライリーとのコラボレーションで幕を開け、ボサ・ノヴァ誕生前のスター、ジョニー・アルフに持ち前のクルーナー・ヴォイスでオマージュを捧げるa-2"Canção de Amor Para Johnny Alf"、ゼと同じく北東部出身のアーチスト、アレッサンドラ・レオンをフィーチャーしたa-3"Iyâ Mesan"、南アフリカのミリアム・マケバによって広く知られた不朽の名曲に、ゼがポルトガル語歌詞を付けたb-1"Malaika"ではルエジ・ルナとデュエット、リニケールとの共作やプロデューサー-ブルーノ・モライスとのシネマティックなインタルードを挟んで、シンセティックなマクンバb-4"Menina Preta de Cocar"、幻想的なバラッドのタイトル曲、そして1stの頃から参加しているイサドラ・メロや、カエターナらがコーラスを務めてのマラカトゥ・エンボラーダ"Siriri"。多彩な登場人物と壮大なスケールの心象風景を描く現代ブラジルの大傑作アルバム。ぜひ著者の書いたシナリオ通り、A面1曲目から順に針を落として楽しんでいただきたいです。