ピアノ弾き唄いの女性S.S.W.で滑らかに瑞々しい想像力を掻き立てるドローレス・マッソーニの2nd アルバム。 今回もローラ・ニーロやラサ・デ・セラを彷彿とさせる楽器的な少しくぐもった唄声がとびっきりの詩情を醸し出し、アフリカ音楽の打楽器グループでも並行して活動してきた抜群のリズム・フィールからカンドンベやサンバ(zamba)に則ったフォルクローレをコンテンポラリーかつジャズ的な手触りへと仕立て上げています。
前作「Lo Pequeno y lo Grande」(2012)でも松尾芭蕉にインスパイアされた"Haiku" なる曲を披露していましたが、今作でもm-9" Verde" にて小野小町の俳句を引用、まだ見ぬ極東の風景に想いを馳せているほか、ピアノのみならずマンドリンもプレイし、よりオーガニックな緑色の風景を描き出すことに成功しています。m-10"Mira"ではエミリオ・ドゥブラン作の子供合唱曲"La Estrella" の一節を用いたりとロジカルな楽曲制作が為されており、8弦ギター奏者のラウタロ・フェルドマン(私がドローレスの音楽を知ったのは彼に手渡されたCDに因ります)とドローレスのピアノ弾き唄いのシンプルな編成が主体だった前作に比べ、クアトロ・メングアンテと名付けられたマルティン・マルセエシ(fletless b.)、フェルナンド・フォンテンラ(g)、ロキー・トラバグリア(per)とアレ・サル(女性cho) からなるアンサンブルがふくよかさをたらし、ドローレスの書く美しい旋律を彩ってゆきます。まずは軽やかに弾む冒頭のカンドンベ曲"Silencio Sutil" を聴いてみてください。ドローレスのイマジネイティヴな世界に惹き込まれてしまいます。この音に呼応するように繊細なタッチのカタナ・イルストラシオネスによるデジパック装丁もお見事。