*2017/2/4 売り切れております。
スタジオ・アルバムでは前々作となる「
Ce」からカエターノ・ヴェローゾ(68)の長いキャリアの上に忽然と登場したバンダ・セーとの新機軸。息子のモレーノ・ヴェローゾの幼馴染みでもあるペドロ・サー(eg)との音作りを軸に、バンダ "ド・アモール" のリズム隊で最近では
ニーナ・ベッケルのアルバムにも参加しているふたり、マルセロ・カラド(drs)とヒカルド・ヂアス・ゴメス(eb)。バックを務める3人とカエターノ・ヴェローゾのサイレント・エレガットのギターにヴォーカル。”トランサンバ”(ロック・フォーマットの音の隙間でサンバのリズムの揺れを感じながら演奏する、と解釈しています)を掲げた
傑作「Zii e Zie」に基づいたライヴ作品、リオ・デ・ジャネイロで全てを作り上げたかったと語るように、彼の地で撮影・収録されたのがこのDVD。
オス・ムタンチスとかつて演奏していた"A Voz do Morto"で幕をあけ、4人の立って演奏する姿、ステージでの立ち振る舞いを見るにつけ、長髪のスタイルは白髪の紳士に、ヒッピー然とした服装は眼鏡ロック男子に(特にヒカルド・ヂアス・ゴメス)変わり、現代版のトロピカリスタ精鋭たちのショーという風情に感じられるのです。アルバム「Zii e Zii」のレパートリーとなるとDVDの方では風景映像とシンクロしてエキセントリックなサウンドが際立ちます。ペドロ・サーのファズ・トーンやディレイ使い、ヒカルド・ヂアス・ゴメスが弾くローズ・ピアノ、マルセロ・カラドの手数の少ないオルタネイティヴ流儀のサンバ・ドラミングが、カエターノの歳を召してますます艶めかしい歌声と相俟って、エクスペリ・ポップ・ブラジレイラの前線の更に先を羽ばたいていることを実感させるに足る感動を覚えます。
ガルデルのタンゴ曲で多くのミュージシャンも採り上げている”volver" のほか、 ロング・エディットとなったDVDの方には「本来、やるつもりじゃなかったけど...」と弾き語り始める"billie jean / elenor rigby"も収録。バックの3人にとっては生まれた頃、ないしはこの世に生を受けるより前にカエターノ・ヴェローゾが世に放った名曲たち、敢えて70年前後の曲を多く採り上げているのも本ライヴの特徴で、中盤のハイライトともなるのが、"irene" や ”nao identificado"('68年白ジャケ通称ireneに収録)。観客の大合唱はもちろんのことファズ・トーンと高みに登り詰める美メロ、背後のステージ・セットのパラグライダーも映えます。「Zii e Zie」収録の傑作曲"menina da ria"やDVDに収録された"tarado ni voce" のように楽器の輪唱でダイナミズムを効かせるような、初めからバンド・フォーマットを想定して制作した新しい楽曲と、前述の「irene」収録曲たちや"maria bethania" などの40年前の曲が相違ない輝きで並ぶこのショーは、どのベテラン・シンガーのものとも異質の素晴らしさ。CDは全17曲、DVDは全23曲。
http://www.caetanoveloso.com.br/ziiezie/