Vermelho とは真っ赤/過激な、という意味。しかし歪ませるのみがオルタネイティヴではないのです。クランチーなギターやハモンドにムーグ、残響で装飾するドラムスの音色、曲の屋台骨を支えるベース・ライン....現在の感覚に基づいたバンド・サウンド。ジャケット写真に映るEV社製ダイナミック・マイクRE-20を使って録られたであろうニーナ・ベッケルの唄声はナチュラルに澄んでいながらも中音域の伸びやかな推し出しが効いていて、一曲目の"madrugada branca" から機知に富んだムードのもと心地よく景色を見せてくれます。この"madrugada branca" は本作の録音メンバーで、カエターノ・ヴェローゾの"Ce" バンドのメンバーとして、また自身で"do amor"(ド・アモール) というバンドでも活動するグスタヴォ・ベンジャゥンとニーナの共作。続いてはオルケストラ・インペリアルの一員としても知られるフビーニョ・ジャコビーナの”toc toc"、女性ヴォーカルでこのユーモアを秘めた曲を聴くとまた良い曲であることを再認識させられます。モレーノ・ヴェローゾ=キト・ヒベイロの曲や、ドメニコ・ランセロッチとの共作曲、またはドメニコとベテラン・サンビスタ - デウシオ・カルヴァーリョの共作など、最終トラックで録音メンバーで共作された”tropical poliester" まで曲毎にいろいろな試みが示されていますが、本作は前述のグスタヴォ・ベンジャミン(g)、ロス・エルマーノスのサポート・メンバーで現在は一緒にド・アモールで活動するガブリエル・ブブ、同じく現ド・アモールで"Ce" バンドでもツアーを廻ったマルセロ・カラード(drs)と、ヒカルド・ヂアス・ゴメス (b, この人はブラゾフというバンドにも在籍)、これら固定メンバーとプロデューサーのマウリシオ・タギリアーリらで録音。ヴィヴィッドな色彩の楽園でクリエイトされるロマンティックなおとぎ話、そんな印象のアルバムです。