サンパウロ大文学部・葡語詩の教授で、世代を超えて敬愛を集める音楽家でもある父ゼー・ミゲル・ヴィズニキのもとに生まれ、ローティーンの頃から舞台戯曲に参加してきた経歴を持ち著書も出版しているマリーナ・ヴィズニキ。70年代フレンチ・ミュージックを思わせるアコースティック・ポップ作品「Na Rua A Agora」を数年前にリリースしていますが、父のアルバムでも鍵盤奏者として活躍するS.S.W.マルセロ・ジェネシが全面的に参加したセカンドが到着しています。
散文詩のように見受けられる風景の断片が近辺で起こる事象の意味を持ちはじめる。よくある愛を歌ったポピュラー・ミュージックとは一線を画すとマリーナは語ります。物語の始まりと終わり、再生、これらをテーマに12篇を綴ったサンパウロのインテリジェントな女性S.S.W. の二作目は、マルセロ・ジェネシの生ピアノをバックにしたm-1 "Funix" やm-8"Elevado"、m-12"Galvotas" から、ヒタ・リーの作品でも共同prod.に立つアレシャンドリ・フォンタネルチがギター・プレイから楽曲制作にも関わった、トム・ウエイツを彷彿とさせる生々しいフォーキー・アンサンブルのm-2"Rota Natural"やボディ・パーカッショニストのマルセロ・プレットが参加したm-4"Buraco La em Cima"、気怠くブルージーなR&R m-3 "Planos Projetas"やルー・リードを彷彿とさせるm-5"Quem Podera"、ドラム奏者アドリアーノ・ブスコが叩きだすフロア・タムのロールにガレージ色を滲ませたm-7"Mais Real"、ジャズのフィールドで活躍するドラム奏者セルジオ・ヘジがフリージャズ的なプレイで参画、シタールまで響き渡るエクスペリメントなm-11"Passo Que Se Volta"。過ぎ去った過去の放浪詩人たちと交信しながら、繊細さが感じられる浮遊する唄声で詩情を描き出すことに成功した、アーティスティック且つポピュラー・ミュージックとしての魅力も放つ一枚。