ブラジルのアコーディオンといえば、トップに大御所のドミンギーニョスが居て、次の世代ではこの人がトップ・プレイヤー - トニーニョ・フェハグッチ。パウロ・ブラガのピアノや弦楽を従えて、愛娘の笑顔に捧げる優美な輪舞曲集を発表。素晴らしいインストゥルメンタル・アルバムとなっています。「Miramari」や ディエゴ・スキッシのアルバムがお好きでしたら是非!
前作ではブラジル南部のアコーディオン奏者、ベベー・クラメールとのWアコーディオン・デュオでショーロやワルツの技法の限りを尽くした傑作を発表、現在までに111枚のアルバムに参加して来たというトニーニョ・フェハグッチ。それほど間を置かずリリースとなった新作では、ピアノに小オーケストラを従え叙情的に惹き込まれる音楽を展開しています。ことの発端はダンサーに因って発注されたacc, per, cla, b によるカルテットのショー。元来から生の息吹を感じさせるアコーディオンの音色がバレエやコンテンポラリー・ダンスと見事なマッチングを魅せ、アルバムへと発展したといいます。伸びやかなクラリネットを聴かせるアレシャンドリ・ヒベイロは固より、コンセプチュアルなピアノ・ソロを発表しているパウロ・ブラガ、ものを語りかけるようなゼー・アレシャンドリ・カルヴァーリョのコントラバスとも相俟って優美な生音によるアンサンブルを作り上げて行きます。日系人ヴァイオリン奏者のヒカルド・タカハシを筆頭とするvln,vln,viola,cello、そしてブラジルの音色・リズムを紡ぐパーカッション。現代音楽/ジャズの流れを汲んだポエティックな輪舞曲の"Circuleta" や "Trilha Feita a Mao" の静寂から沸き上がるような展開には息を呑みます。冒頭がクレズマー音楽の影響を感じさせるタイトル曲"O Sorriso da Manu" などもダンスの為に書かれた曲で、のちにトニーニョの娘オリヴィアに捧げられた"Pacoquinha" などが新たに加わりました。サンパウロの劇場を用いて3日間でレコーディングされた完全無比のアコーディオン・リーダー作の登場。