サンビスタ、
マルチーニョ・ダ・ヴィラの幾人かの子供のひとりであり、先だって成功を収める女性サンバ・シンガー - マルチナーリアと姉妹にあたるのがマイーラ・フレイタス。UFRJ (universidade federal do rio de janeiro) にてクラシックのピアノを学んだ素養と、サンバの名門一家であるという血筋、この二つの恵まれた至宝を最大限に活かしたパフォーマンスでリオ・デ・ジャネイロを湧かせつつあります。ジャコー・ド・バンドリンの"o voo da mosca"をピアノ・インストゥルメンタルに編曲した冒頭、フンド・ヂ・キンタルらのパゴーヂ演奏だと [la la ya la la ]と大合唱、大演壇となる"o show tem que continuar" もメロウなジャズ・ヴォーカルのアレンジでゆったりと心地よく聴かせます。マルチナーリア譲りのハスキーな唄声に、バニラ・エッセンスを振り掛けたような色香立つヴォーカリゼーション、鍵盤の上を跳ね踊る卓越した指さばきのピアノは洒脱なオリジナル曲 "Corselet" などにも顕著に現れています。父親の作品"disritmia"にはマルチーニョ本人も参加、ジョイス作"monsieur binot" にはジョイスが参加しています。ナラ・レオンが唄ったことで知られるシコ・ブアルキの"mambembe" や最終曲"se joga" のピアノ・インストゥルメンタル+スキャットなど華やかさが際立つレパートリーの並びも絶好。インストゥルメンタルのサンバ・ジャズだとピアノ主体というのもありますが、ピアノ弾き唄いのサンバでこれだけ素晴らしいアルバムは中々見つからないと思います。ドラムスに名手ウイルソン・ダス・ネヴィス、ベースはクラウヂオ・アルヴィス、ギターがクラウヂオ・ジョルジという、このサウンド方面にてはこれ以上望めない演奏布陣で、流麗に、自在に、マイーラの音楽を表現します。