g,voのニコラス・ラピネを中心に、cello やp/bandoneon のメンバーがパーマネントに参加、洗練されたチェンバーなアンサンブルでビダーラやチャカレーラを革新してゆく現代的なフォルクローレ・グループがこのクレパス。デビュー盤にて驚異の充実したクオリティと16曲のヴォリュームを誇る本作は、メルセデス・ソーサのピアノ奏者でもあったポピ・スパトッコがプロデュース。リリアナ・エレーロ、カルロス・モスカルディーニらがゲスト参加。
チャンゴ・ロドリゲス作の"Vidala de la copla" の冒頭、深遠なバンドネオンとチェロのハーモニーに導かれ、ボンボ・レゲイロを連打したリズムが顔を覗かせるも、室内楽的なアンサンブルと豊かな唄ハーモニーに覆われてどこか高尚な雰囲気さえ感じさせる、これはジャズ的な動きとフォルクロリなハンド・クラップで洗練のアレンジを見せるm-2"Mirar"へと連なります。ダブル・ギターとピアノのポロポロ零れ落ちるような音とチェロの擦弦音の合間を流れる唄旋律でメランコリアに包まれるm-3"Soy distancia"には、同郷テンペルレイ出身のベテラン・ギター奏者カルロス・モスカルディーニが参加。 バンドネオンに沿ってスキャットから瑞々しいワルツへと展開する佳曲m-5"Crecer" やラミロ・ガロらの弦楽四重奏が加わったm-14"Solo un dia"を始め、ニコラス・ラピスのソングライティング能力の素晴らしさが光りますが、bのマティアス・ウィルソンが作曲したインストm-13"El Pensamiento"やp/bdnのマティアス・ウィルソンが作曲したm-9"Eh, gato"など、音楽院であるコンセルバトリオ・フリアン・アギーレの卒業生を中心としたこのクインテートの構成員それぞれが卓越した技術と感覚の持ち主であることをも示しています。歌えるメンバーたちによるコーラス・ワークとアーシーなリズム・セクションが印象的なm-7"Tonada del Cabrestero"はベネズエラのシモン・ディアス曲。大御所のリリアナ・エレーロが参加したm-8 "Zamba del chaguanco"はイルダ・エレーロ曲、m-12"Maestras de Jujuy" はレオン・ヒエコの曲、と自分たちのカラーに染め上げた4つのカヴァーも秀逸。