前作のアルバムから5年、女性シンガーを含むキンテート編成でチャカレーラやタンゴ・ミロンガなどのルーツ・リズムを大人の良質音楽 - ジャズの香りさえ漂うフォルクローレ・モデルノへと昇華させたグループ、マリア・イ・コセーチャの新作が届きました。
アヴェジェーダ・ポピュラー音楽学校の面子で’97年に結成されたマリア・イ・コセーチャ(正式名称をマリア・デ・ロス・アンヘレス・レデスマ・イ・コセーチャ・デ・アゴスト....長いということで今のマリア・イ・コセーチャになったそう)。生楽器のみの編成による有機ジャズ・タッチな演奏で都会的にアルゼンチンとその周辺のラテン・ルーツを刷新、クラリン賞の候補にも挙がった女性ヴォーカルとバンドですが、5年ぶりの新作はまた印象を新たにする仕上がり。まず耳に入ってくるのが名だたるタンゴ・シンガーのように情感を増したマリアのヴォーカル。そして速いパッセージをこともなげに生ギターで繰り出すペドロ・フリオ。後半の曲でヴァイオリンやチェロと共に現代音楽の奥行きをパースペクティヴに見せるペドロ・フラゲーラのピアノ。決して過大な音で推さずとも、阿吽の呼吸でチャカレーラ、チャマメ、ウアイーノ、バルス・ペルアーノとルーツ・リズムのツボを感じさせてくれるコントラバスのセバスチアン・カーラにパーカッションのマチアス・フリオ(ギターのペドロの兄弟)。コルドバの新進S.S.W.の作品から、中華調のメロディにハッとさせられるレオン・ヒエコの曲、フランコ・ルチアーニのハーモニカが参加した哀愁漂うチャチョ・ムジェール曲、オロスコ・イ・バリエントスに現代的な感触を得る自作曲の数々にペペ・ムニェス- フアン・ファルーのチャカレーラ・ドブレ・トルンカなるリズム様式の曲まで12曲。特に後半に進めば進むほどこのバンドの懐の深さと革新性が滲み出てくるように思います。