'16/2/11 昨年の重要ヒット・アルバムのひとつ。再入荷しました。
夏頃にはCD完成との報を受けていたのですが、チケット完売が続出するコンサートの度に売り切れてしまっていたというのが、サンパウロのノーヴォス・コンポジトーレスのシーンから登場したユニット - シンコ・ア・セコの新譜。既にS.S.W. として2作をリリースしている
ト・ブランジリオーニや
ヴィニシウス・カルデローニを中心に、若手ピアニストとの
傑作デュオ作をリリースしているペドロ・アルテリオ、そしてペドロ・ヴィアーフォラとレオ・ビアンキー二。アウディトリオ・イビラプエラのライヴとドキュメント・フィルムを収めたCD+DVD での発表となった前作の冒頭、ショーでの登場シーンが象徴するように、5人のシンガー・ソングライターが竿もの(ギターやベース)を手に横一線で自分たちの手に因る楽曲を唄いまわすというスタンス。ト・ブランジリオーニの国内盤「オンテン・オージ・アマニャン」のライナーの為にトにインタヴューを採ったのですが、グループとソロでの違いを尋ねたところ、『 プロジェクトをやる第一の条件としては、それぞれがソロ活動を継続できるようにというものでした。ソロでは独りで何かを話すだけですが、グループでは、それぞれのスピーチに対して連帯責任を負います。そしてソロでは私たちの違いが浮かび上がり、5 a secoプロジェクトで誰が何をしているか、人々は見る(または想像する)ことができるでしょう。』と語っています。
それぞれがS.S.W.として活躍するなか、グループとしても作品を発表する。これは容易いことではないと思いますが、トの言葉にもあるようにひとり作った楽曲やアイディアを持ち寄るだけでなく、コラボレイトすることで新たな何かを生み出す、集団行動ならではのミラクルな瞬間が詰まっているのがこのシンコ・ア・セコの魅力です。初のスタジオ盤ということで、5人のミュージシャンと共同プロデューサーにアレー・シケイラを迎えての制作。クレジットには明記されていませんが、恐らくは打楽器もマルチにこなすヴィニシウス・カルデローニやレオ・ビアンキー二がドラムを叩き、ベースはト・ブランジリオーニやポール・マッカートニーに多大な影響を受けているというペドロ・アルテリオかな、等とどの楽器を誰が担っているのかを想像しながら聴くのも楽しい接し方だと思います。レニーニに端を発するハイブリッド・ポップの系譜を踏襲し、エフェクティヴなegの重ね方や鉄線ギターの煌めいた音色とガット・ギターの使い分け、コーラス・ハーモニーにも各々のキャラクターを活かした幾重もの工夫が凝らされています。MPBの洗練と発展に大きな寄与を働いた先達にオマージュをおくったm-2"Eu amo Djavan"や、レオ・ビアンキー二とペドロの父セルソ・ヴィアーフォラ作のm-4"Nem tchum" 、コンピレーション
「Coffee&Novos Compositores」にタイス・ボニッジ、ペドロ・アルテリオ&パウロ・モナルコのヴァージョンで収録されたm-6"Veio pra ficar"、一際ハイブリッド・ポップの近未来的煌めきを体現するm-8"Geografia sentimantal"、そしてワウ・ギターの音色をフィーチャーしたm-10"Festa de rua" 、m-14"Passo a Passo" などにも顕著なリズムの跳ねたホワイト・ファンクや21世紀に於けるR&Rのエッセンス。そしてト・ブランジリオーニが得意とする瑞々しいカウンター・コードのクリシェへ美しいメロディを載せてゆくという手法が遺憾なく発揮されたm-13"Ninguem nem eu" やm-9"O Sonho"などの洗練されたMPBの極み。いまの世代のシンガー・ソングライターそれぞれの個性が5人分化合して生まれたアーバンな結晶。