サンパウロの音楽シーンの最前線で活躍する、新鋭シンガー・ソングライター、ト・ブランヂリオーニの新作が日本盤でリリース。卓越した演奏技術と詩的な情感、そしてフレッシュな感覚が詰まった音楽愛に溢れたアルバム。
TÓ BRANDILEONE / ONTEM HOJE AMANHÃ
解説:伊藤亮介(大洋レコード)
歌詞対訳:荒井めぐみ
デボラ・グルジェルやウリセス・ホシャに師事し、'08年にジアナ・ヴィスカルヂやタチアナ・パーハが参加したソロ・アルバムをリリース、若手男性S.S.W.ばかりが5人集まったグループ - シンコ・ア・セコで至る会場をことごとくソールド・アウトにしながらCD+DVD をリリースしたのが'11年。女性シンガー、タイス・ボニッジやシンコ・ア・セコの盟友ヴィニシウス・カルデローニの新譜などプロデュース業、ジアナ・ヴィスカルヂのツアー・ギタリストとしてヨーロッパへ行ったりと常に動き続けて来た若干27歳のマルチ・インストゥルメンタリスト/S.S.W.。'12年末から'13年6月までにサンパウロとパリで録音された自身2作目となるソロ・アルバムでは、曲提供を行なってきた作品のより綿密さを増したセルフ・カヴァーや書き下ろし、ハイブリッド・ポップとジャズ理論の効果覿面な使用、卓越した演奏技術と詩的な情感を醸し出す柔らかな唄い口、意欲的に動き続ける若人の豊富な音楽愛が詰まった素晴らしいアルバムとなっています。ツアーでも訪れているフランスの言葉で書かれたm-3"mon coeur n'est plus" があるかと思えば、デメトリウス・ルーロ&パウラ・ミリャンに曲提供したm-4"com que pe"はトが自ら叩くカホンとチアゴ・コスタのアレンジによる弦楽四重奏の不思議なマッチングで軽やかに心地よい音を紡ぎます。そしてシンコ・ア・セコの作品でもハイライト的位置を占める名曲m-5"pra voce dar o nome"はゼー・ゴドイのピアノと弦楽を伴いよりドラマティックに、シンコ・ア・セコの作品にも収められているナンバーとしては、他にブルー・アイド・ソウルからの影響を思わせるm-7"se toca" とレニーニがゲスト参加した"deixe estar"が収録。タイス・ボニッジに提供したm-6"relatividade" ではコンラード・ゴイスのギターと共に小気味よいパッセージを転がしてゆく生ギター・デュオ+ヴォーカルの名人芸的な境地も垣間見せます。英語詩で書かれたm-7"her song" はファルセット・ヴォイスも用いたAORのテイストで生粋の音楽好きとしてきっと多くの音楽を聴いて育ったことが伺えますが、タイトル曲m-11"ontem hoje amanha" の流麗な旋律の美しさと併せ、優れたメロディ・メーカーとしての才覚を証明してくれています。録音の基本編成はト・ブランヂリオーニ (vo,g)/ゼー・ゴドイ(p)/セルジオ・カルヴァーリョ(b)/チアゴ・ハベーロ(drs)にストリングス・アレンジがチアゴ・コスタ。口笛とシンクロナイズしていくアコースティック佳曲m-12"vai depender"ではすべての楽器をひとりで演奏。'14年の話題作となること必至の手の込んだ素晴らしい作品です。
↓5 a seco のヴァージョンの"Her Song"、共作者のペドロ・アルテーリオが先にヴォーカルを取ります。