本日は瑞々しい旋律の宝庫、ミナス・ジェライス出身の男女デュオ・ヴォーカルを主体にしたアコースティック音楽のグループ、カミランガのご紹介です。
レオ・ナシメントとフェルナンダ・ヂ・パウラ、'03年からマデイラ・ヂ・レイというグループで活動していたふたりがグループ・サガラナと名を変えミナスで数々の賞を受賞すると、サンパウロへと進出、そこで最終的にグループ名をカミランガと定めます。前作アルバムに収められたアフロ・ブラジル - バイーアのリズム要素を用いた"Crioulo Doido"が話題となり、"Saudade de Aruna" は第12回イーリャ・グランヂ音楽と環境の祭典で最優秀曲を受賞、myspace で5万聴取を獲得するなど徐々に盛り上がって来たところで制作された2nd アルバムが本作。スーパーヴァイザーにジョイスなどの作品でも知られるベース奏者のホドルフォ・ストロエテールを迎え、生ギターも弾くレオ・ナシメントとフェルナンダ・ヂ・パウラの掛け合いにハーモニー、その自然を愛でる気持ちを表すかのようにナチュラルな佇まいの深みを携えた唄声、パンプーリャ湖の水面を吹き抜ける風のように爽やかさを感じさせる旋律はやはりミナス産の音楽だということを強く感じさせます。このふたりが殆どの楽曲をコンポージング、パーマネントなメンバーはサンバ/ショーロで用いる打楽器から、ダルブッカやカホンなどブラジル以外所以の楽器もこなすパーカッションのホムロ・アルブケルケ、ベースとカヴァキーニョのジョアン・ホシャの4人編成。大きく振り動くメロディが如何にもミネイロといった風情で耳を惹くm-2 "Curral" や、こどもの唄声がフィーチャーされた続く"Palavra" などでチェロやヴィオラの参加を仰ぎ、流麗で劇的な印象を与えます。リベルタンゴに掛けたm-7"Libercanto”ではガブリエル・レヴィがアコーディオンで参加。ギターの単低音とカヴァキーニョのアンサンブルでショーロ/サンバ的なアンサンブルを作りながらも掛け合いで載るミスティークなメロディ("Peixe Tolo") や、ヴァイオリンの対旋律やカホンが既視感の風景中に未知の扉を開けてくれたり("Da Afonso Pena a Paulista")と、ナチュラル志向にこだわった生楽器アンサンブルの中で見え隠れする先鋭的な感覚、これも進んでビートルズの影響をその音楽に採りいれたクルビ・ダ・エスキーナスの地ならではという気がします。水の匂いのするバイーアォンで涼しげなm-4 ”Raca"は彼の地の御大ミルトン・ナシメント&フェルナンド・ブランチによるもので、男女の掛け合いスキャットから詩的エッセンスを感じさせる唄へと入りゆく様に鳥肌が立ちます。弦楽と這うようにメロディが入り組む"Boto" はジョビン作の名演。タイトル、タイトル曲の"De Afonso Pena a Paulista" とは20世紀初頭のブラジル大統領アフォンソ・ペナがミナス・ジェライス州ベロ・オリゾンチ出身だったことから、サンパウロへ出て来た自分たちを準えて"サンパウロっ子へ"と音楽と取り巻く風景の美しさを唄っています。