19世紀末 - 20世紀初頭というと日清・日露戦争のあたりです。その頃に多くの音楽を生み出し、ブラジル音楽の母とも云える女性がシキーニャ・ゴンザーガ(1847-1935)。ブラジル国内で初めてオーケストラを指揮した女性で、流行歌にポルカ、タンゴやワルツ、小さい作品も含めればその数2,000以上もあるそう。このシキーニャの作品を現代音楽やモダン・ジャズを通過した現在の手法で、生楽器のオーケストレーションなのに斬新に聴かせてくれるのがこの盤。
Gilberto Assis e Ana Fridman direcao musical e arranjos ,
Na Ozetti, Vange Millet, Suzana Salles, Carlos Careqa, Rita Maria interpretadas
/ Chiquinha em Revista (ブラジル直輸入盤 2,400円税込)
サンパウロの知性的に研ぎすまされたモードが、ショーロ+室内管弦楽、あるいは其処に歌手といった編成を軽やかに、かつ先達の偉業に深みを与えて蘇らせます。今を活躍するシンガー、
ナー・オゼッチ、ヴァンジ・ミレー、スザ?ナ・サリス、
カルロス・カレカ、
ヒタ・マリア、みなパウリスタらしく個性的な特徴を持った”声”がそれぞれ参加。ピアノのアナ・フリードマン、ベースのジルベルト・アシスが、シキーニャの未発表曲を含む13曲に素晴らしいアレンジを施し、そこに曲毎に多重録音のフルートやクラリネットの鮮やかな旋律や、ハーモニカ、弦楽四重奏、カヴァキーニョやバンドリンといったブラジルらしさが色濃く滲む楽器が入って来るという編成。ブラジルにおいてのフェミニズム運動で草分け的存在とされるシキーニャに相応しい、織物のような柄があしらわれた可愛らしいジャケット・イメージにこの色使い。大昔の遺産を、微塵の軽薄さもなく、それでいて朗らかな雰囲気に鮮烈な印象が覗く、こんな素晴らしい手法で蘇らせたコンセプチュアルなアルバム。いま、聴くならこれだと思います。スゴくお薦め。
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