「美しく整った語句、旋律的、哀しみと優美さ。静かな瞬間を携えて」本国の紹介文に踊るこれらの装飾語がしっくりときます。ミネイロ - カリオカのシンガー・ソングライター - モモことマルセロ・フロータ(ex. フィーノ・コレチーヴォ)の3作目となるアルバムが届きました。
センチメンタルな成分を含んだ甘い声で、大衆・マスに向けてではなく、まるで傍らの親しいひとに唄いかけているような距離感。それでいて卓越した空気を醸し出すから不思議です。自らの爪弾くヴィオラォン(ナイロン弦ギター)と、メタロフォンやカシオトーンの装飾。共同プロデュースのカエターノ・マルタ( ex Wado e Realismo Fantastico ) が本業のベースだけでなく、スライド・ギターやローズ・ピアノなど様々な楽器を操り、遠鳴りする汽笛のような音色のサイケなギターをヘジス・ダマシェノ( Cidadao Instigadoほか)らがさしこめば、波止場の潮が砕ける音にも似たブルーノ・ブラッジオンのゆったりしたドラムが呼応し、とミニマリズムに基づいた手法をもとに、曲に因ってはドメニコ・ランセロッチ( drs, perc) やマックス・セッチ (tp)、ルーカス・サンタナ(flute) が参加して楽曲に彩りを与えます。シカゴ・ワールド・ミュージック・フェスなどにも参加し北米もツアー、シカゴ・リーダーなどの誌面で素晴らしいと賞賛された経歴、もっといえばアンゴラ - U.S. - スペインと移り住んだ子供の頃の記憶からか、視点は外の世界を向いています。「水夫のセレナーデ」と英語で名付けられた本作には、シャルル・アズナブールやウイリー・ネルソンといったモモの多様な音楽背景と、ベルチオールやセルジオ・サンパイオと一緒に参加したミナス音楽のプロジェクト "クルビ・ダ・エスキーナス”('07) から脈々と通じるブラジル流のメランコリアが息衝いています。