ケロセネ・ジャカレーというバンドで北東部音楽旋風に火を炊きつけたオルチーニョのソロ二作目もマラカトゥ、ココーといった伝統リズムとロック/ファンキの衝動を融合し強烈なインプレッションを残す作品となった。ソロ作をリリースしたばかりのマックス・ヂ・カストロが鍵盤で参加、女性のドラム奏者シモーニ・ソウル(シコ・セーザル、再結成ムタンチス)、セルジオ・カッシアーノ(per. メストリ・アンブロージオ)らと繰り出す強力なバンド・サウンド。
北東部音楽の国内制作コンピレーション”ノルデスチ・アトミコ・ドイス”でも楽曲を採り上げられている、このオルチーニョことヴァルトン・コエーリョはペルナンブーコ州カルアルー生まれの30代男性。一躍シーンに躍り出たのは97年公開の盗賊を描いた北東部の伝記映画”バイリ・ペルフマード”のサントラでシコ・サイエンスらと共演してから。スヴァミ・ジュニオールがプロデュースを施し、アルナルド・アントゥネスやヴァンジ・ミレー、ゼカ・バレイロ、シコ・セーザルらとのコラボレイト、共演が話題を呼んだ1st"イリャ・ド・デスチーノ”の余韻も冷めやらぬままリリースされた新作ではトン・ゼーの奇抜さとファンキを混ぜ合わせたようなm-4をはじめ、北東部音楽でよく登場するハベッカ(ヴァイオリン)の音に似せて加工したようなギター・フレーズが鼓舞するm-2や、とびっきり美しいモダン・ポップの世界へと昇華させるm-3、その名も”ココー・ヂ・プラスティコ”と名付けられたラップ仕立てのココーm-5、牧歌的なダンス・ソングm-6、”北大通り”m-7では闊歩する街の風景を切り取ったように感じの良いオルガンが入るが、これはジュニオ・バヘットやトラッシュ・プール・クアトロで知られるドゥドゥ津田の演奏。オルチーニョが敬愛するルーラ・コルティス(ゼー・ハマーリョとのサイケ・アルバムでも知られる)と共作されたm-8はキラキラしたカヴァキーニョがノーヴォス・バイアーノスを思わせるワルツの逸品。m-9以降はマックス・ヂ・カストロが参加してm-10の”シランダ年代記”などは実験的で幻想的な音像。最後を締めくくるm-11「ナォン・ミ・アミ」はフォホーの醍醐味、オルケスタ・ポプラール・ダ・ボンバを迎えてのマルシャ(2ビートのカーニヴァル・リズム)で2006年のペルナンブーコに於いてのカルナヴァルで大ヒットした曲。歌詞もサウンドもポジティヴな表現に満ちた大らかな一枚。共同プロデューサーにしてベース奏者のアルフレド・ベロはシモーニ・ソウルと並んで様々なプロジェクトで活躍するアーチストでもある。