映画「モーターサイクル・ダイアリーズ」の主題歌でグラミーを受賞、ラテン・ポップの女王社シャキーラのアレンジャーとしても知られるホルヘ・ドレクスレル。キャリアの中で最もダンサブル、南米全体を見渡す新作のアルゼンチン盤が到着。コロンビアの首都ボゴタと現在居住するマドリッドの双方で友人音楽家たちと制作。カエターノ・ヴェローゾ、ボンバ・エステレーオ、アニタ・ティジュ、エドゥアルド・カブラ(Calle 13)がゲスト参加。
「洞窟のなかの舞踏」、50歳になるホルヘ・ドレクスレルの新譜に名付けられたタイトルは、確かにリリカルでロジカルな表現を続けて来たこの素晴らしいシンガー・ソングライターの作品に相応しいものです。冒頭のエレクトロニクスとアコースティック楽器が調和するタイトル曲では、サンバ・エンヘードの打楽器の用い方を引用し、続くカエターノ・ヴェローゾをゲストに迎えた"Bolivia" ではビリンバウの残響をフィーチャーしたクンビアで、第二次世界大戦の際にドレクスレル一家が受けた迫害と南米で唯一の受け入れ先となったボリビアのことを語り口調で綴ります。トロピカリアとニュー・ウエーヴが融合した"Data Data" はアメリカ人ジャズ音楽家ベン・シドランとの共作でアフロ・ブラジル的な管楽器アレンジ、ベネズエラのポピュラー音楽の巨匠シモン・ディアスの引用を用いた"la luna de rasqui"、チリの人気女性MC - アニタ・ティジュがラップを披露するアーバン・ソウルの"universos paralelos" 、輪舞曲のようなバルサに、フォルクローレ・リズムを散りばめたハイブリッド・ポップ... この4年で自らの足で赴いて見て回ったラテン・アメリカ中の音楽エッセンスと、その密接な音楽と人との関係性に改めて主眼をおいて制作された大作。