かつてはカエターノ・ヴェローゾやガル・コスタ、近年ではアドリアーナ・カルカニョットらに楽曲提供を行なっているペリクリス・カヴァルカンチ。つい昨年には娘でジャーナリスト/フォトグラファーのニナ・カヴァルカンチが監修し、サンパウロ・シーンを中心に多くの女性アーチストが参加したトリビュート作「
Mulheres de Pericles」が制作。コアなミュージシャンズ・ミュージシャンという立ち位置から、その功績を表立って知られるようになってまいりました。2010年から'13年までに制作された本アルバムでは、その間にS.S.W.としてデビューし、斬新なアプローチで高い評価を得ている息子のレオ・カヴァルカンチをはじめ、
トゥリッパや
チエー、
イアラ・ヘンノ、ルイザ・マイタら30歳代前後のサンパウロのポップ・サイド一線級アーチストが数多く参加して、小曲を次々と繰り出すという、ユニークでリリシズムに富んだ表現に花を添えています。更にはビッグ・ネームであるラニー・ゴルヂン(g) やアヒーゴ・バルナベー(vo)の名も。さて、一聴するとギリェルミ・エルヂ(g) やペリクリス本人ら、あまりの跳躍具合に付いて行けるか不安だったりもするのですが、ダビーなアレンジが施された冒頭曲では「リー、スクラッチ、ペリー...クリス」、ロック・バンド - カショーホ・グランヂが全員参加してのロック賛美"Juro"、
ドゥドゥ・ツダによるサウンド・インスタレーション的アプローチにビートルズのメンバーを絡めた散文詩を朗読、続いてチエーをメインvoに迎えた"Bem-Vindos"は思いっきりビートルズの作風だったり、バイーアォンのリズムで帝王ジェームス・ブラウンにオマージュを贈る"Sex-maxixe"などもあり、内外のポピュラー史を汲み取った楽曲たちが並んでいますので、耳を峙ててそのロジックに目を向ければ愛おしさ、親しみやすさに必ずや気付かされることと思います。元マメロ・サウンド・システムのルルデス・ダ・ルスがラップを披露するブラジリアン・ヒップホップ"Rap da baleia"、
ホムロ・フローエス、
ホドリゴ・カンポス、ルイザ・マイタらエクスペリ・サンバ勢が参加した"Se for um samba"、カリーナ・ブールが参加したエレトロ・フレーヴォのタイトル曲まで、斬新な彩りに満たされます。18曲中16曲は未発表の新曲で、m-4"O ceu e o som" はガル・コスタに提供した楽曲をサルサ/キューバ調のアレンジでセルフ・カヴァーしたもの。