SSW / ギタリストのギジェルモ・カポッキのアルバム「Milesimas」で共作者として、ドラム奏者として活躍。ジャズ・フォルクローレのコントラバス奏者、パブロ・トッシのトリオでもドラム奏者として参加しているのがこのネストル・ラモニカ。自身の名義を冠した本アルバムでは、コンポーザーとして、また演奏家としては部分的にヴォーカル、全編のドラムスにカホン、ギターからトランペットまでマルチにこなす多彩ぶりを発揮。女性シンガー - マリア・ルイサ・マショをフロントに、ピアノのオマール・カラフィッニ、ギターのパブロ・マルティネスと4人の編成でシンプルに編んだアコースティック基調の唄たちが15曲。流麗なピアノの調べにナイロン弦ギターのスリリングなコード・チェンジがリフレインしてゆき、叙情的なメロディをナチュラルな女性ヴォーカルで紡ぐ... その中ポスト・ロック的なアクセントを持ったドラミングが波間を滑る船のようにドライヴしてゆく冒頭の"Nina" (=女の子)ですぐに聴くものの耳を捉えます。eギターとアナログ・シンセにスナッピンを外したスネアの深遠な響きのなかを浮遊するように唄う"Misma"(=同じ)では澄んだ神秘的な空気が流れ出します。タンゲーロの雰囲気を持ったネストル自身のギター弾き語りなどもあり、ソフトな唄声と木の葉のように舞うメロディに非凡な感性を感じずには居れません。eピアノが入る"Pie"などは'70sのユーロ・ジャズ・ロックと見紛う魅力を放っていますし、フォルクローレ界の偉大な作曲家”クチ”・レギサモンの"Balderrama"の美しい旋律をギター1本で弾き唄うその佇まいは現代流のモダンさでトラッドを鮮やかに刷新しています。レギサモン本人の声をエンディングにサンプリングしてオマージュを捧げることも忘れていません。陶器の打楽器ウドゥなどを用いながら深い奥行きを与えたり、ロジカルに構築された1曲ごとの音の際立った粒立ちが、打楽器奏者のソロ作だということを思い起こさせてくれます。
オフィシャル・ページで試聴できます。
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