情緒と悲哀の旋律、乾いたギターの音色、時代性を特定できないサウンド。アルヘンティナ・ロックの裾野は確実に膨張している。
ババソニコスやイーリャ・クリャッキなどなど、時代を超越した感覚でメロディやサウンドを構築、時に変態的とまでされるそのサウンド・スケープで我々を驚愕させるアルヘンティナ・ロックの世界。一度憑りつかれるともう癖になります。90年代後半的アナログな手触りのポスト・モダンなサウンドからモラトリアムの季節を突き抜けたメロディ、サンプリングやフィルターでイフェクティブに迫るトラックや、かと思えばサビになった途端8ビートのミュート・ギターで異様なタイム・スリップぶりを見せたり、イナたいエレクトロ・ビートにメランコリックな唄が載ったりと独特のミックス・ポップを展開するのが、このニュー・カマー・シンガー・ソングライター”アマデオ・パーサ”をプロダクト面で強力にバックアップするのが、自らが主催するライブ・イベント”ブエン・ディア”にも出演している、シーンを賑わせる実力者=ジュリアーノ・アクリ、そしてスアベスタル、ア・チラドール・ラセルといったアルゼンチン・ロックのバンドで活躍する面々。この1stでの8トラックは知性を感じさせる素っ飛んだアレンジで、細かく構築されたものを己の哲学で持って勢い良く放流した、優れたポップ・アルバムとしての表情を持っている。