ジョーベン・タンゴ(エレクトロニック・タンゴ)の波も一段落し、今や若手によるティピカルなタンゴ楽団の研ぎすまされた感性が世界的な評価を受けつつある。中でもオルケスタ・ティピカ・フェルナンデス・フィエーロの激しいプレイはヨーロッパや南米全土を席巻中で、要注目な存在。1stではワイン・ボトルを叩き割り、2ndではピアノを水門からブン投げた。4人のバンドネオン、5人のヴァイオリン/チェロ、コントラバス、ピアノに専属シンガーがほとばしる汗を振りまきながら音塊を弾き出す。若手きっての正統派(=ティピカ)12人編成タンゴ楽団の最新リリースは国立図書館ホルへ・ルイス・ボルへス・ホールでの熱狂ライヴ!
揃いのスーツに指揮者が居て、厳格なしきたりの中揉まれた名プレイヤーたちが無表情で...という往年のティピカ・タンゴ楽団のイメージからは程遠いオルケスタ・ティピカ・フェルナンデス・フィエーロの面々。このバンドにフェルナンデス・フィエーロなる人物は居らず、ステージ前方に陣取ったバンドネオン隊の一人はドレッド・ヘアーで4人がヘッド・バンキングしながら強烈なスタッカートを決めて行く様は圧巻の一言。立ったまま演奏するバイオリン隊の弓が激しく上下し、ピアノは椅子からずり落ちんまでに鍵盤を叩く。コントラバスはHRバンドから抜け出てきたかのようなヒッピー風の出で立ちだ。。。インストゥルメンタルをメインに据えたこのバンドの男性専属歌手はここぞというところで颯爽と登場する。ここでも二曲(m-10"想い出", m-11"さらばバルディ”) 採りあげているO.プグリエーセ楽団をモチーフにしていると云われる彼等だが、この演奏のエネルギーは志の高さと感情の昂り全てを音に込めていると云っても良い程の激しさを魅せ、それこそハイエンド・オーディオで聴こうものなら卒倒するんじゃなかろうか?バンド自身による新マスター・ピースm-1やm-4に加え、若い感性によって潮の満ち引き、ダイナミズムに重きを置いたドラマティックなアレンジメントが施されたE.ファルー作
”カンデラリアのサンバ”m-6、邦題”逃避” として知られるA.ピアソラ作m-8、A.ピアソラ作品とウルグアイのハイメ・ロース-ラウル・カストロ作が出逢った(バンドに依って両曲がミックスされた)最終トラックまで高いポテンシャルと緊張感を保ち続ける必聴盤!