シルク・タッチの上品さを備えたサンバ・インタープリーターと云えばこの人、マルコス・サクラメント。シコ・ブアルキを引き合いに出されそうな知性的な佇まいの唄声でエリヴェルト・マルティンス、ノエル・ホーザ、バーデン・パウエル、カルトーラらのサンバ・クラシコからラパを賑わす新進コンポーザーの曲まで。
真の上質、木の温もり、ノスタルジー。02年のクララ・サンドローニとのバーデン・パウエル歌曲デュオ作、04年の古のサンバ曲にテーマを絞った作と順調にリリースを重ねて来たサンバ歌手マルコス・サクラメントのビスコイト・フィーノ・リリース三作目。始まりのm-1とラストのm-13は未だ売り出し中のルイス・フラヴィオ・アルコファが提供した曲で、ルイス・フラヴィオ本人もアルバム中でギターを演奏、切れの良いプレイを聴かせてくれる。サンバジャズ・トリオでも活動するルイズ・アルヴィスの熟達したウッド・ベース、ネルチーニョ・アルブケルケのパンデイロ、ルイ・アルヴィンのcl、あちこちのアルバムで名を見かけるエドゥアルド・ネヴィスのss、アレンジメントを担当するジャイーミ・ヴィギノーリのカヴァコを伴い、木管の柔らかな音を活かしたショーロ調のアレンジメントで小気味よいサンバを聴かせてくれる。卓越した歌唱力は云わずもがなで、シルキーな声が心地よい。ノエル・ホーザ、カルトーラという大御所のサンバ・クラシコに、70年代から評価が高く最近リリースされた新作が現地評論家から絶賛を浴びている女性SSWファチマ・ゲヂスのm-11も採り上げている。