モニカ・サウマーゾのピアノ(ネルソン・アイレス)と管(テコ・カルドーゾ)だけを従えた傑作 「
alma lirica」がリリシズムに重きを置いた”静かな唄もの”傑作とすれば、今度は器楽演奏の側から室内楽、現代音楽、ジャズ・インプロヴィゼーションにMPBの手法を交えたグルーポのアルバムが発表となりました。ブラジリアン・ジャズの老舗 ジンボ・トリオのエスコーラにいた女性フルート奏者レア・フレイリは、多くのミュージシャンのバックなどでテコ・カルドーゾらと共演。NYでの演奏など永年に渡るミュージシャン同士の交流の末にふたりの管楽器奏者は私生活でもふたりの息子を設ける家族となりました。そして時は流れ、本プロジェクトと同名の曲 "Vento em Madeira" (=木の風)を書き、それを収録した「Cartas Brasileiras」が各国のジャズ雑誌などプレスで高い評価を得ました。そして本作のリリースへと繋がるのです。マリア・ヒタのバックなどで知られるチアゴ・コスタの流麗なピアノ、ヨーロッパでキャリアを積んだフェルナンド・ヂマルコのコントラバス、SSWとしても活動するエドゥ・ヒベイロのフレキシブルでナチュラルなドラムス/パーカッション、そこにレア・フレイリのフルートとテコ・カルドーゾのサックス/フルートがハーモニーを、オブリガートを奏でます。ショーロやフレーヴォを下敷きにチェンバー・ミュージックに仕立てたオリジナル・コンポーズや、美しい旋律は現代音楽的に、インプロヴィゼーションはモダン・ジャズの要素をとりこみながら、スキャットなどでモニカ・サウマーゾが半分近くの楽曲にゲスト参加。彼女をフィーチャーした"Luz Negra" (ネルソン・カヴァキーニョ作)はオブスキュアなムードの室内楽アレンジで。静かな音楽の潮流のなかでも重要な一作です。アートワーク内の写真は女性シンガーとして活躍するダニ・グルジェルの撮影。
Vento em Madeira - Mamulengo (ミネイロのSSW、
セルジオ・サントスに捧げられた一曲)