2023/5/23 売り切れました。
ラ・プラタの女性S.S.W.ロイ・サンギネッティの丹精こめたアルバムが、寒気に澄んだ空気とよく似合う。
コンテンポラリー・フォルクローレのアーチストを数多く輩出するラ・プラタ出身で、美術の高校を卒業後、UNQUIで電子音響/作曲を専攻。ロック・バンド、ラ・サガ・デ・サイウェケに参加したのち、デュオなど様々な形態で自身の音を探す旅に出ます。エドガルド・カルドーソによる言葉−「あなたの声とギターを信頼してください」に背中を押され、幼少から自身が経験してきたもの、身の回りの出来事や感情を親密に綴るというソロのシンガー・ソングライターという道を選択。ここに収められた9曲は、家族と行ったアルゼンチン北東部旅行で見た風景や、そのときに「ツアー巡業をする音楽家になろう」と思った初心の決意、これらが詰まっています。ナチュラルに柔らかく滑らかなロイの声と、ナイロン弦の繊細に紡がれる倍音。この声とギターの対話を基盤に、egのオブリガートやフルートにチェロ。m-4"El Silencio"にはこれら管弦の客演があり、現代的なギターのリフレインとの対比でより新鮮な印象を受けます。また楽曲最終章にはE.サティ"ジムノペディ"の一節の引用があり、ロイの音楽遍歴が窺い知れます。ゆったりとしたフォルク・タッチのm-5"El Amor"には、ビーチョ・フェオ・トリオでも活動するS.S.W.のエセ・オルティスがデュエットで参加。前述の効果的なeg(m-2"Nacimento")の演奏も彼によるものです。ノエリア・シンクナスのピアノの美しい響きが印象的なm-6"El Despertar"、ソロ・ギターにポエトリー・リーディングが載ったm-7"La Libertad"、瑞々しく広がる詩情たっぷりのサウンドスケープが魅力の一枚。