アルゼンチン、コルドバのレジェンド。指先を通じて溢れ出るイマジネイティブな情景、言葉もなしに語られる物語を多彩な客演と共に三部作で発表してきたフアン・カルロス・インガラモ。そして、パタゴニアの大平原から発想を得た滑らかに美しいコンテンポラリー・フォルクローレ作を発表しているミンギ・インガラモ。兄弟二人を主体としたロス・ムシコス・デル・セントロがリト・ネビアのバックを務める'82年より少し前。インガラモ兄弟は'77年より作曲活動を行い始めました。近年ではオーケストラと共演したり、専ら鍵盤奏者/コンポーザーとしての活躍が知られるミンギは、このグルーポ・エンクエントロではギターのクレジットとなっています。
浮遊するエレピ、芯の太いベース・ライン、木管のジャズ・インプロ、アーバンなレゲエにファンク…このコズミックなフュージョン・サウンドは今だからこそ輝いて聴こえます。ビル・エヴァンス、ハービー・ハンコック、チック・コリア、欧米のジャズに呼応してモダンなヴォイシングに即興を果敢に取り入れ、元来のフォルクローレで培われたリズム様式やアルゼンチン奈良ではの音楽観を更に発展させていくという試み。共にクレジットされているペルサ・ナバロはフアン・カルロスとのダブル鍵盤の編成で、フェンダー・ローズからシンセに至るまで、浮遊する音色がジャズ・マナーで飛び交います。'80年にLPとカセットでフィリップスからリリースされた「Fabulas de Cielo」と'81年「Nuestro Hogar」を2 in 1にしたのが2020年初リイシューとなる本盤。後者のアルバムには近年もソロ作が注目されるオスカー・フェルドマン(ss, as, flute)や、日本でもよく知られるアレハンドロ・フラノフの兄、セサル・フラノフ(b,この時まだ16歳!)らがクレジット。本作がコルドバの、アルゼンチンのジャズ・フュージョンに置けるパイオニア的作品であることがよく分かります。
*惜しむらくはCD-Rでのリイシューとなっており、日本のプレイヤーと相性の悪い個体もあるため、当店では業務用ディスク・ライターPLEXWRITER2で焼いた予備のCD-Rをお付けいたします。