サンパウロらしく奇才ぶりを発揮するエクスペリメンタル系統のMPBシンガー・ソングライターの異例なまでに完成度の高いアルバムが入荷。アドリアーナ・カルカニョット、ペリクリス・カヴァルカンチ、アンドレ・アブジャムラ、ムジカ・リジェイラ、この辺りの一風変わり種なブラジル音楽がお好きならぜひぜひの大レコメンド !
サンパウロに巻き起こったポスト・パンクのムーヴメント"ヴァングアリスタ・パウリスタ”の昔から活動する、シンガー・ソングライター。ヒッチコックばりの容貌を活かし喜劇役者としての一面も持つカルロス・カレカは前作で「トム・ウエイツ・カヴァー集」をリリースしてブラジル音楽好きの裏を掻いたものの、このアルバムではやってくれました。伝説の三人組 - ムジカ・リジェイラのメンバーであり、名プロデューサーと呼び名も高いマリオ・マンガがチェロの弓を手に、カルロス・カレカの新たな発想をキャンバス上に構成するがごとくの優美で尖ったアレンジメントを施しています。ストリングスや多重コーラスと、E.ギターのトレモロ・エフェクト、サンプリングされたループ音が混じり合い、効果的に配された小物使いもまた崇高なプロットありき、想像力・志の高さを感じさせてくれます。また多くの曲でその曲に合ったゲストを招聘、共演を聴かせてくれています。サンパウロMPB界ではトップクラスの実力と評判のモニカ・サウマーゾにベテラン - マリア・アルシーナらとのデュオで美しくイマジネイティヴな風景を見せつつ、トニーノ・フェハグッティのアコーディオンとバルバトゥーキスのマルセロ・プレットとのデュオでフレーヴォをやったり、サックス奏者を招いてのセカンドライン・ファンクにブルーズもあれば、ピアノに複合リズムで現代音楽的な異空間を出現させます。圧巻はアヒーゴ・バーナベーの曲でイタマール・アスンプサォンのアルバムに収録された曲からパーツを抜き出してループするビートを作成、現代一級品のニュー・ウエーヴ・タッチへと仕上げたm-12。ブラジル屈指のトロンボーン奏者ハウル・ヂ・ソウザとカリプソ+サンバなトロピカル新境地を覗く最終曲まで、練り上げられたコンセプチャルなエンターテイメントがぎっしり!