港湾の風景が目に浮かびそうな程メランコリックなフォルクローレ・ポップ/ロックを創造するペケーニャ・オルケスタ・レインシデンテス。キュアー、カエターノ・ヴェローゾ、ポリス、ゲンズブールにアルゼンチン・フォルクローレ・ロックの大物レオン・ヒエコといったカヴァー、バンド初期のライブ音源や未発表曲、映画『ウィスキー』の挿入曲を含む新作を発表!
グループ通算7枚目となるリリースの今作「カプリーチョ」(=気まぐれ / 狂想曲)。ここにはアコーディオン、バンジョー、チューバ、トランペット、コントラバス、ギターにドラムス、そしてミュージック・ソーとマルチ・インストゥルメンタリストである5人が蓄積して来た豊富な音楽好奇心が詰まっているのだ。ロックとミロンガのダイナミズムを融合させた「ミ・スエルタ」(01年)、クレツマーやロマ音楽の如きスピード感漲るフォルクローレ・ロックを展開した「ミヒータ・デ・パン」を発表したのちに映画「ウイスキー」のスコアを担当しヨーロッパをツアーした04年、
メ・ダラス・ミル・イホスのメンバーとのタンゴ・ユニット”
ラ・キメラ・デル・タンゴ”での活動や魅惑のフォルクローレ・ポップ・バンド”
アダマンティーノ”のプロデュースなど精力的に自らの足元にあるものを見つめた音楽発信を行ない、
まるでレディオ・ヘッドがフォルクローレをやっているかの如き劇的な傑作"トゥラへ”を発表した05年と常に我々の期待を上回る行動を見せてくれる”ペケーニャ・オルケスタ・レインシデンテス”。本作のトピックの一つでもあるアコーディオンなどを用いたオリジナルとは違った編成でのカヴァーはどれも自由でドリーミーに羽ばたいている。ポリスの「インヴィジブル・サン」に始まり、トーキング・ヘッズ「ヘヴン」、キュアー「ナイト・ライク・ディス」に至っては声まで完コピ。ムタンチスも採り上げていたカエターノ・ヴェローゾ=ジルベルト・ジルの「パニス・エ・シルセンシス」には女性シンガー、カローラ・ベサッソを迎える。それに加えて04年にフレンチ・アライアンス・アルゼンチン支部主催のアクースティック・ライヴに参加した際のヴァージョンでセルジュ・ゲンズブール(w/ B.B.) 「ボニー&クライド」、奇才パスカル・コムラード「ニィゴ・ニィゴ」をも収録。また第二のトピックとしてオスカー”ある視点部門”を受賞したウルグアイ映画「ウイスキー」のサウンドトラックからのインストゥルメンタル曲、そして更にバンド名が”レインシデンテス”だった時代(*注・同名のロック・バンドが居た)のライブ音源やアルゼンチンの主要アーチストを手がけるエドゥアルド・ベルガージュがエンジニアリングを担当した書き下ろし曲m-7や大物シンガー - レオン・ヒエコの曲へオマージュを捧げたカヴァー(m-16)など盛り沢山の内容。
ホルへ・ドレクスレルの「ハイ&ドライ」カヴァーと同様に、欧米の名曲に南米流の解釈を加えるとまったく新鮮なものに生まれ変わるという好例が此処に!おすすめです。