アルゼンチン・ロックに取り憑かれている日本全国数万人の方に朗報!都市型クールネスを携えた大所帯フォルクローレ・ロック・バンドが多様な文化、価値観を説く。エル・ポルトンの2nd。
94年からパブやホール、大学などで演奏活動を行い、レオン・ヒエコやアルボリートらともステージを共にしてきたエル・ポルトン。トランペット、サックスに多様なリズムをこともなげに刻むパーカッションが二人も在籍する10人組の編成で、ムルガ、カンドンベ、タンゴといったウルグアイ・アルゼンチンのルーツ音楽から、フォルクローレ、キューバン・サルサ、クンビアとラテン・アメリカ中のルーツ音楽要素にジャズ/フュージョンを通過したギターや鍵盤が絡むという非常に興味深い音を出すエル・ポルトン。もちろんアルゼンチン・ロックの魅惑的な部分はしっかりと受け継がれており、スピネッタやフェルナンド・カブレラに大人数バンドのダイナミズムを加えたような印象を受ける。都会のムルガとでも呼ぶべきm-1ではオルケスタ・ティピカ・フェルナンデス・フィエーロからバンドネオン奏者が参加してミロンガのフレーズでブエノスアイレスのアーバンな夜を妖艶に彩る。ブラスのド迫力ブロウからサルサへとなだれこむm-2や、パーカッションの叩きだすクンビアのリズムにピアノやアコーディオンのカウンター・フレーズがフィットするm-3,m-4、ケーナが登場してフォルクロリックなm-7、フィドルが緩やかにたゆたうアクースティックなm-8、全編を通して夕凪の顔を撫でる風の如くに平地を吹き抜ける心地よいメロディーが何より秀逸で、知性とメランコリアを感じさせるカルロス・デルベッチの声質とコーラスのハーモニーが胸をぎゅうと掴む。