まず驚かされるのが、前代未聞の"ジャケット無し"CD製品と心臓のアートワーク。自身もミュージシャンとして活動するアルフォンソ・バルビエリによるこのイラストは、パブロ・グリンホトのこころを映し出す唄たち、というアルバム・コンセプトを見事に現しています。豊富な水量のラプラタ川、この川沿い音楽の瑞々しさとフォーキーな佇まいが見事にマッチングした揺るやかな中にポップ・センスが光る傑作。ゆったりと流れるナチュラルなテンポ。日常生活のなか浮沈するひとときの感情、心象風景の色合いを詩情たっぷりに描き出します。ひとの歩調と同期したかのハートウォーミーな柔和さとメランコリーを映しだす体感的な唄表現の多彩さ。パッと思いつく限りでもSSWコワフールの凪いだ波間を思わせる傑作アルバム「
el tonel de las danaides」などアルゼンチンのインディペンデントなうたもの作品の多くにヴァイオリン奏者として客演するパブロ・グリンホト自身が、クリオージャ・ギターの爪弾きにピアノの流麗なフレーズにヴァイオリンの弦楽重奏に、そして自身の歌を幾重か重ねたコーラス・ワークにとマルチ・インストゥルメンタリストとしての、またハーモニーの魔術師としての本領を発揮。室内楽的に編まれたサウンド・コンストラクトの中をグリンホト節とでもいうべきなだらかな下降旋律で優しく唄うタイトル・トラック”amor"にはじまり、ボサ調の"corazon" 、ピアノと弦楽のシンプルながら豊かな響きが秀逸な”entre tus ojos"(あなたの目のあいだ)には女性のみのフォルクローレ・グループ -
エントレ・コプラスのロサリオ・アダッドがデュエットで参加。澄んだアルペジオの響きにポエティックな言葉が印象的に載る”brilla de emotion"(感情の輝き)、歩みを緩めたチャカレーラ調”sol de febrero"(二月の大陽)、フィリー・ソウルを思わせる"tus lindos ojitos"(あなたの可愛い目)では軽快、快活な表現をあえて打楽器レスで演奏、本盤でミックス/マスタリングにエンジニアとして活躍する
フアン・スチュアートのエフェクト使いが光る"al salir del mar"(海を出発するとき) ではナイロン弦ギターの音色がエレクトロニカ調に。13曲がひとつの絵巻物のように物語性を持っています。(ブックレットが無い為に)気になる歌詞などの情報は今後
webに公開していく様子。
10月にOTFFの本拠地CAFFで予定されるレコード発売記念のショー、または
Sonido Ambiente主催のショーなどでは、ルドビック・バンと名付けたハンドメイド・オーケストラを付けて演奏しています。
6月9日 SONIDO AMBIENTE presents RONDA DE TOMI at VUELA EL PEZ より パブロ・グリンホトと仲間たちで"Brilla de emocion" 撮影と打楽器パートの一部: 伊藤亮介