ロング・セラー御礼「
フェルナンダ・タカイ/彼女の瞳が輝く処 ~ ナラ・レオン・ソングブック」でも斬新なアレンジのニホンゴ版「KOBUNE」が収録されましたが、原曲「O Barquinho」をナラ・レオンがプレイしたのは85年になってから。作詞者のホナルド・ボスコリが当時のガール・フレンド=ナラ・レオンに捧げたこの「O Barquinho」、ナラは唄う事を拒否したといいます。なぜならホナルド・ボスコリがマイーザとの女性関係に走ったから。そしてこのマイーザが自身の61年のアルバム「BARQUINHO」の一曲目にこの名曲を収録。ボサ・ノヴァの一大傑作としてブラジル全土をフィーバーさせたという物語。(出典:ボサ・ノーヴァ詩大全・著者の坂尾 英矩さんは昨年のフェルナンダ・タカイ in 草月ホールにもいらっしゃって下さってました!)
このデジパック・リイシューによるマイーザのアルバム。クレジット表記はないのですが、小舟に乗って笑顔を見せている面々、演奏はルイス・カルロス・ヴィーニャス( p , bossa tres )、エルシオ・ミリート(ds tamba trio)、ルイス・エサ(p tamba trio)、ベベート・カスティーリョ(flute, b tamba trio)、そして「Barquinho」の作曲者ホベルト・メネスカル(g)という当時のブラジルで最高峰とも言えるミュージシャンたちによるもの。サンバ・ジャズで繰り広げられるこのアルバムの方向性、慈しむように唄う情緒豊かなマイーザの歌唱、これらがボサ・ノヴァ=ジャズ・アレンジのイメージを決定付けたのでしょう。今はどうか解りませんが、以前レコード店には必ず置かれていた日本レコード協会所属会社の国内盤総覧(電話帳のように分厚かった...)、洋楽編でボサ・ノヴァはジャズの欄にあったのです。話は逸れましたが、このアルバムの4曲目「Recado A Solidado (Chico Feitosa)」の軽快なピアノとフルートにブラシが紡ぐスウィング、10曲目「Eu E O Meu Coracao」の楽園気分なE.ギターのソロ、ルイス・エサによるその名も「Maysa」という曲やカルロス・リラ「Voce E Eu」にA.C.ジョビン「Cala Meu Amor」...丁寧に丁寧にR.ボスコリの詩を噛み締めながら抑揚するマイーザに歌手としての尊厳を見ることができます。