ブエノスアイレス郊外ルイス・ギションの生まれで、クラシカルなピアノから音楽の世界に飛び込んだシルバナ・レイナ。その後、本作にも重要な役割を果たす前衛ジャズ・フォルクローレのミュージシャン、エルナン・リオスに師事し、女性歌手/女優のガブリエラ・エスピネルとクマンタというデュオで作品を発表、エルナン・リオスのアルバムやショーにも参加を果たして居ます。さて満を持して制作された初のソロ作品では、中南米スペイン語圏中のレパートリーを網羅してコンテンポラリーなジャズ・フォルクローレ/アルゼンチン川沿い音楽のフィールへとリノベイトしています。
ムビラやハングのような音色を発するアルゼンチン産の楽器- ガラハンドとざわめくパーカッションを背景にベネズエラのシモン・ディアス作の"Pasaje del olvido"をことばを愛でるように唄い、続く"Dos gardenias"ではキューバン・ジャズをインプロヴァイズしたような神秘性で、瑞々しい川沿い音楽のフィールを存分に持ったm-3"Imagenes"もキューバ音楽のフランク・ドミンゲス作曲のものを自分たちのコンボと新たに解釈。このリオプラテンセスの手法、フォルクローレとジャズを掛け合わせた演奏が新鮮味を与え心地よいことこの上ない感じです。アルゼンチン作曲家の巨匠”クチ”・レギサモンの"Cartas de amor que se queman" もシルバナ・レイナの澄んだ唄声を活かしたゆったりと揺らいだアレンジで、同曲屈指の好演ではないでしょうか。プエルトリコ産の楽曲 "Silencio" もジャズ・ギターとの掛け合いで優しく祈るように歌い上げます。特筆すべきはこのセミアコ・ギターを自在に操り全編で甘い音色のオブリガートを決めるアニバル・マイダナやプロデュースも手掛けるピアノのエルナン・リオスら演奏陣のジャズとフォルクローレを基盤にしたアレンジ感覚の素晴らしさ。他にもウルグアイのハイメ・ロースの"Tu laberinto"やサンバ・ジャズ調のアレンジへとアップデイトされたアルゼンチンのチコ・ノバーロ"Algo contigo" など全11曲が聴き入っているうちに眼の前を車窓から見た風景のように飛び去ってゆきます。シルバナ・レイナは真のインタープリーターのあるべき姿を1stアルバムで証明しています。
http://www.myspace.com/silvanareina