初夏の訪れを告げるかのように、新緑の青葉をつけて。サンパウロの'03年にスタートした新進ボサ・ノヴァ男女デュオのこのアルバムが訪れる季節の新鮮さを感じさせてくれて凄く良いです。「太陽の道」(A.C.ジョビン-D.ドゥラン)、サンパウロのエスコーラ”ヴァイ・ヴァイ”の名手オズヴァルヂーニョ・ダ・クイーカが参加した「ネガ・ヂナ」(Z.ケチ)、'29年に制作された最初期のサンバ・カンサォンでミス・ブラジルなども歌い継いで来た素晴らしく美しきメロディの「リンダ・フロール」、ベテランのサンバ/サンバ・ソウル歌手
ルイズ・メロヂアが本人も参加しての名曲「ウ・モーホ・ナォン・エンガーナ」、カルトーラの「アコンテーセ」にタイトル曲となった「サウドシズモ」(=ノスタルジア、カエターノ・ヴェローゾ)。このサウドシズモが言い当てるように、いにしえのブラジル・ポピュラー曲を、エライニ・ギマラエンスのナチュラルな唄声とアンドレ・ベドゥーレの嗅覚鋭いアレンジで、都会的なセンスのボサ・ノヴァに刷新。土着的リズムを実験的モダイズムで発信するユニット - ドナジカの人脈を中心とする、日々寝ても覚めても音楽との対話を続ける面々たちの活躍、鋭敏な感性がアコースティックを基調とするアレンジの中に見え隠れする形で息づいています。グスタヴォ・ソウサ(drs,
セレブロ・エレトロニコ etc )、グスタヴォ・ルイス(g,
Tp4 etc...本デュオのペンによる1曲は彼のアレンジ)、エクスペリメンタルなソロ作が話題のアンドレイア・ヂアスの曲を採り上げていたり、マルセロ・モンテイロ(b.sax, flute)らの木管楽器も唄に華を添えています。このデュオの片割れであるアンドレ・ベドゥーレとマリア・プレアのバンドで一緒にプレイしているホヴィウソン・パスコアルが共同プロデュース。そう、時代感覚にフィットした新たなポップ・カルチャーを多く輩出するサンパウロ・ミュージシャンたちのシーンにとっても大きな存在となりそうな一枚です。