バンド名は何故にフランス語なのか、一曲目のトイ・ポップ・インストゥルメンタルが一転、何故にブラス入りガレージ・ロックになり、喧噪と静寂を繰り返し、複合リズムのブギーを刻むフリー・ジャズやら、ピアノを使ったワルツ・サイケデリアと、映画のスコアのように場面毎表情を変えるのか、まったくもって実態のつかみづらいユニットがこちら、レ・アマチュール。トランペットを主に生業とするフアンファ・スアレス (ここでは他に vo, prepare piano, key, per, g, も)が首謀となった6人編成のバンドです。高校時代にペドロ・アスナール審査員のオーディションを経て音楽教育の奨学金を獲得したフアンファは、バークリー音楽院(ボストン)へ留学をします。そしてブエノス・アイレスへ戻り、セッション・ミュージシャンとして幾つかのジャズ・アルバムやインディペンデント・ミュージシャンのライヴなどへ参加しながら(la bomba tiempo, polaco sunshine ...etc) 、このオルタネイティヴ性の固まりのようなレ・アマチュールをスタートさせます。ジャズ畑で活躍するラミロ・フローレス(s, perc) や、その辺にある音色も採り込んだエクスペリメンタルな音場を得意とする
パブロ・パス(b, space echo) 、バークリーの同期でもあるニコ・ソリン(p)らユニークな同世代の面々6人が集い、エレクトロニクスやエフェクトを含む様々な試みを行った集大成。サウンド・コラージュ、ムビラなどの楽器、ヴォコーダーやAahコーラスの用い方は、やはり現代の先鋭的な感覚を感じさせますし、トランペットのソロとそのバックでざわめく複雑なリズムにはフリー・ジャズの論理的なインプロヴィゼーションを行っているようにも聴こえます。ドラムやギターの吹っ切れた疾走プレイからは、チリ辺りの70's レアなサイケデリック・ロックを彷彿とさせます。管がフィーチャーされれば今度はユーロ・プログレ、あるいはダイナミクスを追求したポスト・ロックといった風情。しかし、このカラフル明快な色合いや酩酊する感じ、ユーモア、音楽で発信する和みの風景は、現代ブエノス・アイレスのシームレスにミュージシャンが往来する土地柄でしか生まれ得ないものであると、そう思います。
http://www.myspace.com/juanfasuarez