サンパウロのノヴォス・コンポジトーレス(新しい作曲家たち)にまたひとり脚光を浴びる存在。初のソロ名義となるアルバムをリリースしたカエー・ホルフセンは、ガフィエイラ・サンパウロの発起人のひとりでもあります。
サンバの楽器やリズム・フィールを用いながらゆったりとまろやかな手触りの編曲を施し、慈しむように柔らかく唄うその声は限りなくジェントリー。管楽器を伴い、俗にいうラテン音楽の艶かしさをフレーズの節々に感じさせ、現在盛り上がりを見せるサンパウロの音楽シーンと直接リンクしたモダンな佇まいをも見せる...と曲提供などで実績充分のSSW カエー・ホルフセンのソロ・デビュー作が登場。リオで興ったサンバの社交ダンス - ガフィエイラをサンパウロの現在の音楽家たちで体現する
ガフィエイラ・サンパウロ(第22回ブラジル音楽賞・最優秀サンバ・アルバム, 2011 )で
ヴェロニカ・フェヒアーニと共にダブル・フロントをとり、ダニ・グルジェルの傑作
「Nosso」収録曲をはじめ、ウイルソン・モレイラ、ドナ・イナー、ファビアナ・コッツァとサンバ歌手への楽曲提供も行なっています。兄の影響でボブ・マーリーをリスペクトするカエー、コンポーズの節々に登場する無国籍感はモロッコをルーツにするスペイン人である父の影響だといいます。地中海音楽の要素を脈々と連なるMPB、ブラジル音楽の系譜に巧く溶け込ませ、サンバ・カンサォンからカリンボーに弦楽や木管を伴ったメロウ・アコースティックと本質を突きつつも新しいものを生み出そうというパウリスタの気概に溢れています。タチアナ・パーハ「
インテイラ」ほか多くのアルバムで活躍するギタリスト - コンラード・ゴイスとの共同プロデュース、録音はコンラードやチアゴ・ハベーロのオカ・カーザ・ヂ・ソン。ブックレットの写真はダニ・グルジェルが撮影。 コントラバスにはファビオ・サー、ピアノにはマエストロ - ゼー・ゴドイ、ジアナ・ヴィスカルヂやヴェロニカ・フェヒアーニがコーラスに参加して、ナイロール・プロヴェータもcl を吹き、とサンパウロの絆が集結。ベース奏者や画家・彫刻家としての顔も持つマヌ・マルテスと共作された冒頭の"Terra em transito" 。そしてトリビュート・ライヴなどにも参加し敬愛するシコ・ブアルキの作風を彷彿とさせるポエティックな佇まいの m-5 "Que nem a gente"、その前曲でジアナ・ヴィスカルヂもレパートリーにし、ゼー・ゴドイのソウルフルなローズが光る"Linda"、パライゾポリス(ファヴェーラ)の子供たち支援プロジェクトのために書かれた劇的なストリングスとモダンなテクスチャーによる佳曲 m-7 "No tambor de crioula"、これら3曲はセルソ・ヴィアーフォラ(
5 a seco のペドロ・ヴィアーフォラの父)との共作やヴィアーフォラ自身の作。午後の珈琲に似合うボサ・ノヴァ・デュオ、
デメトリウス・ルーロとパウラ・ミリャンも演奏したカエー渾身の名コンポーズ最終曲 m-9 "E So o que falta" は
マルセロ・カブラル(b)やチアゴ・フランサ(ts)とバトゥカーダの映えたアレンジで。