アルゼンチンのミュージシャンでどのジャンルにおいても、ルイス・アルベルト・スピネッタ、この人を尊敬しない者は居ないと思えますが、現役で発信しつづけるスピネッタの音楽的DNAを受け継いでいるといえば、Bs.As. インディペンデント界のヒーローのひとり、ルーカス・マルティ。兄の
エマニュエル・オルビジェウールはかつてスピネッタの息子であるダンテとイーリャ・クリャッキ&バルデラマスというユニットをやっていたこともあるのです。その後ダンテはヒップホップの方へ行きましたが.....ア・チラドール・ラーセルというエクスペリメンタルな要素も孕んだグループを経てソロになった彼は
バリアス・アルティスタス などのプロジェクトも含め、エレクトロ・ポップ - ネオアコトロニカでエキセントリックな
アルバムを連発する多作ぶり。
最新作はルーカスの真骨頂である繊細かつこだわりの感性で音色を積み重ねるスタジオ・ワークスの最たるものともいえるベッド・ルーム・アコースティック・ミュージックを繰り出した、「
1er y Ultimo acto de Nocion」の続編。ここ何作かギターとベースでルーカスのサポートをするフェミニンなアコースティック・ポップのバンド、
ロサルのエセキエル・クローネンブルグ(g)とマリア・エスキアーガ(vo, g)が参加、ずばり”ロサル”(バラのこと)という曲も2人に捧げるかのように収録。チラドール~からの盟友でもあるチャーリー・ガルシアの息子 - ミギ・ガルシア(organ) も参加。アコースティック・ギターを中心に、手の届く範囲の極プライヴェート空間を満たす歌。さりげなく重ねられたコーラスやアナログ・シンセのトーンに「夢見心地のロマンティシズム」を感じ取ることができる、そんな小曲が23曲 + エルメティカ(メタルのバンド.....)のカヴァーが1曲。
崩壊したCD-Rをモザイク・パズルのパーツとし、顔を描く。そしてCDフォーマットの極限である74分みっちりの収録時間。m-2 で唄われる ”Bestseller" などの風刺的な歌詞。孤高のインディペンデント・ミュージシャンであるための挑戦的姿勢と反骨心が、この一見身近な愛を唄ったアコースティック・トラックスにも籠められています。