ギター専門でキャリアを渡ってきたカリオカが詩的で素朴な自作ボサ・ノヴァ歌曲集を
ブラジルはリオ出身のギター奏者でミルトン・ナシメントのバックを務めたり、'89年に発表された女性歌手クララ・サンドローニのアルバムで作編曲を手掛けたりしたのち、近年にインスト・サンバ・ジャズで一枚、インスト・ソロ・ギターでも一枚自作品を発表しているエンヒッキ・リソフスキーが、女性歌手/カヴァキーニョ奏者マリアナ・ベルナルデスの参加を仰ぎつつ、詩情あふれる自らの歌声と共に制作した唄もののアルバム。
冒頭から小気味良いギターと打楽器小物にマウロ・セニジのフルート、爽やかに吹き抜けるボサ・ノヴァ・フレイヴァーが堪らない佳曲"Samba de Bonde" で軽快に幕を開けます。パゴーヂのリズムが転がりだすm-2"Canta, Cristo Redentor"、穏やかに腰を据えて紡ぎ出されるボサ・ノヴァm-3"Cidade das Meninas" 、どれも親密なプロダクションから伝わって来る楽曲の素の良さ。ミルトン・ナシメントに捧げられたm-8"Bem-te-vi" やピアノのたおやかな音色をフィーチャーしたワルツのm-9"Valsa do amor qualquer"など以外は基本的にギターの弾き語りとタンボリンなどのサンバ打楽器という至って素朴なシンプル・アコースティックのサウンド。ことばとメロディー、ハーモニーの融和というものに極めて真っ当に向き合った結果、ブラジル音楽ならではのまろやかな包容力、フェルナンド・ペソアの詩作に節をつけたm-11"Valsa Passiva"など詩情が滲む作品となっています。年輪を積み重ねたエンヒッキのバリトン・ヴォイスの存在感とゲストvo マリアナ・ベルナルデスの澄んだ唄声のマッチングも素晴らしいです。