2023/4/5 売り切れました。
ラ・プラタ、川沿い音楽の「声とギター」アルバム
アカ・セカ以降の世代の台頭を感じさせてくれたラ・プラタのフォルクローレ・グループ -
ビーチョフェオ・トリオのひとり、エセ・オルティス。国内のサンタフェ、コリエンテス、レシステンシアを廻るコンサート・プロジェクト"Ruta Nacional Cancion" にもセバ・イバーラ(チャコ)らと並んで抜擢され、ラ・プラタ代表として出演を果たしましたが、このエセ・オルティスによるソロ・アルバム「私の庭の水撒き」が届きました。その名のごとく、自然風で巻き起こった土ぼこりのようなナイロン弦ギターの最初の一音の響きを、ミストのように瑞々しい歌旋律と近代的で神秘的な構成和音が覆ってゆくという、唄とギターのみによる至極シンプルな小曲集。ギターのアルペジオひとつを取っても、我々とはまったく異なるリズム・フィール、フォルクローレの複合した拍子で紡がれ、そこにボルヘスやJ.L.オルティスを生んだ国の詩的エッセンスが独特の間を醸し出します。夜の心象風景を想起させるm-3"Donde cicunda lo avido"、今作の共同作業者、マリアノ・セラダがうっすらとエフェクト処理したAOR調のm-4"Flora"やビーチョフェオ・トリオでの音楽性にも通じる新世代の川沿い音楽 m-5"Amanece" 、ミュートを多用したギター奏法とメロディの組み合わせが斬新な m-6"Solesmares" などハイブリッド・アコースティックな表情を見せる曲もあり、更にはギターを抱えて故郷の人や風景を描き続けたアタウアルパ・ユパンキm-7 "Tu que puedes, vuelvete" をカヴァー。ここからフォルクローレ・ギターのインスト独奏m-8"Despedida"、メランコリーな旋律に胸を締め付けられるm-9"Alumbrador"、m-10"Guitarra estellera" とアルバムの流れも川が水を得たように秀逸。最終曲のm-15 "Nave gane" には作家のレオニダス・ランボルギーニの一節を引用しており、ラ・プラタ大学で芸術に関する多くを学び、現在は教える方の立場にあるエセ・オルティスのロジカルな表現を裏付けています。このCD作品の制作課程というのがまたユニークで、制作を薦めたのはミキシングなどを担当したマリアノ・セラダだそうなのですが、曲が出来る度にSoundcloudで公開、SNS上でチャットをしながらひとり30ペソのファンドを募り、300口を集めることに成功し製造された、という現代のアーチストならではの経緯があります。