カエターノ・ヴェローゾ、アルナルド・アントゥネス、イタマール・アスンサォン、これらブラジルの音楽史をつくってきた錚々たる面子とコラボレイト、楽曲を採り上げてこられたクリチーバの作家/詩人/教授パウロ・レミンスキ。80年代末に亡くなっているのですが、生きていれば丁度70歳ということで、父と同じくもの書きとして、ミュージシャンとして活動する実娘のエストレラ・ルイス・レミンスキが現代のサンパウロのミュージシャンたちと父の作品をトリビュート。80年代のムーヴメント - ヴァングアルダ・パウリスタ直系のヒネリの利いたロックンロールへ仕上がっています。エストレラの夫テオ・ルイスがegで、ex.TP4、現シナマンテスのふたり(ナタリア・マロ b、マリア・ポルトガル drs) らがオス・パウレーラなるバンド名でクレジットされている他、ナー・オゼッチ、アルナルド・アントゥネス、ゼリア・ドゥンカン、ウヤラ・トヘンチ(バンダ・マイス・ボニータ・ダ・シダーヂ)、レオ・フレサットらがゲスト参加。
パウロ・レミンスキの遺した音楽作品を現代のミュージシャンたちがリノベイトした全く新たな音楽作品が本作。パウロと女流詩人アリシ・ルイスの間に生まれ、現在30代半ばを迎えるエストレラ・ルイス・レミンスキは夫でギタリストでもあるテオ・ルイスとデュオ・アルバムも発表しています。現代らしくレゲエのバックビートや、フォークトロニコのエッセンスも採りいれたりしながらのロックンロール。所々にブラジルらしさが顔を覗かせます。ロックンロールに根差したエクスペリメントなMPBの先達、アルナルド・アントゥネスとのデュエットで披露するm-5"Nao mexa comigo"、瑞々しいアルペジオと遠鳴りするアコーディオンのハイブリッド・フォーキー・チューンm-7" Se houver ceu" はゼカ・バレイロがvoを、パウロ・レミンスキ自らの音源から恐らくはテープ起こしで収録したm-13"Valeu" はまさにアコースティック・ブルース、カンドンブレ状に打楽器アンサンブルとコーラスのみで構築したm-14"Adao" まで、シアトリカルな佇まいとまろみが共存するエストレラの唄声の質も相俟って、唯のロックンロール・アルバムという枠に収まらないDisc1。ナタリア・マロの唄うエクスペリメントなm-1"Diversonagens susperas" に始まり、イタマール・アスンサォンとパウロの共作曲"Dor elegante" はエレクトロニクスも用いたポップ・チューンへと改変、ゼー・ミゲル・ヴィズニキとパウロの共作曲m-3 "Sinas de Haicais"はゼリア・ドゥンカンが、シェイクスピアの詩作にパウロが曲を付けたm-5"Transformer"はナー・オゼッチが唄い、ガレージ・サウンドにポエティックなことばが載るm-6"Hard Feeling"には作者イタマールの娘(アネリスの姉妹)セレナ・アスンサォンが参加、エストレラの同郷クリチーバのミュージシャンでウラヤ・トヘンチ(バンダ・マイス・ボニータ・ダ・シダーヂ),レオ・フレサット、ベルナルド・ブラヴォらがコーラスを担います。半数程の楽曲でプロデュースを務めるフレッヂ・テイシェイラがヴォーカルを採るm-7"Hoje Ta Tao Bonito"、クンビアとアフロ・ブラジルが入り混じったm-9"Sou Legal Eu Sei"にはベルナルド・ブラヴォが再登板... と詩的でインテリジェントな雰囲気を漂わせながらも多彩なスタイルのヴォーカリストが入れ替わり登場するのがDisc 2。