此処日本ではMelopea からの過去作がECMやクワイエットな音楽好きの間で話題になったこともあるアルゼンチン'53年生まれのベテラン・ギタリスト- リカルド・カペジャーノ。ギター1本によるソロ作を発表。タンゴをモチーフとしながらも透き通った和音が心地よい現代的に洗練された作品です。
'85年に音楽院で発表した論文"Manuel de falla" がアルゼンチン音楽を定義するうえで重要な位置を占める、と彼の地で盛んな音楽教育の分野に置いても尊敬を集めるリカルド・カペジャーノ。
本作はタイトルも"ギター・ソロの為のタンゴ好き協奏曲"ということで、巨匠オズバルド・プグリエーセの部屋というショーで封を切り、タンゴを基盤としたコンポジションであるということを自身のライナーに記しているのですが、原型が分からないくらい飛躍的な発展を遂げたということでしょう。第3楽章 m-6"すべてのタンゴは夜行性である"に、いにしえのタンゴの旋律へのオマージュを感じるほかは、洗練された高度なヴォイシング、カウンターコードなどを多用した透き通った和音構成がただひたすらに心地よい現代的なギター・ソロ作品となっています。ディレイなどのイフェクトは用いていないと思うのですが、和音の残響を響かせながら別のパッセージへと展開してゆく手法や、ハンマリングや弦摺音などの仕種までを収録した巧妙な録音の施されたギター・アルバムでもあります。組曲形式にインタルードを挟み込み、時に感情を揺さぶりながら紡ぐ45分24秒。