ボサ・ノヴァを正統に継承したベレン出身、ブラジリア在住の女性SSW サンドラ・ドゥアイリービ、ボサ・ノヴァ50周年に湧いた2008年に女性歌手のセリー・クラードやホベルト・メネスカルを迎え制作された傑作「A bossa no tempo」が再発となりました。
デヴュー盤「do principio ao sem-fim」の鍵盤を中心に洗練された音と豊かな唄声で2007年のラテン・グラミーにノミネイトされたサンドラ・ドゥアイリービ。そこではファチマ・ゲヂスやジルソン・ペランゼッタ曲を採り上げていましたが、このボサ・ノヴァ50周年の記念すべき年に、リオ・デ・ジャネイロで制作された傑作「A bossa no tempo」(時間の潮流=ボッサ)では、ブラジリア出身のギタリスト-パウロ・アンドレ・タヴァレス、アジウソン・アルカンターラやゲストのホベルト・メネスカルといったギタリストが中心となってハーモニーを構成、コントラバスには名うてのプレイヤー -ジョルジ・エウデルが参加しています。1stには収録されていない自作の楽曲も含め、13曲の正真正銘ボサ・ノヴァが収められているのですが、うち7曲をセリー・クラードとデュオのかたちで共有してゆきます。カルロス・リラの"quando chegares"、ジョビンの"voce vai ver"にメネスカル"o ceu nos protege"...レパートリーや曲順にもコンセプチュアルなものを感じますが、なかでも圧巻なのはバーデン・パウエル=ヴィニシウス・ヂ・モライス作のm-4 "samba em preludio"、m-6 チト・マヂ”balanco zona sul"、m-11ジョアン・ドナート"lugar comum" のゆったりとしたタイム感と心地よく揺れながら柔らかな声で唄う二人の楽しげな表情が浮かぶような名演。現代の音楽家の作品でここまで自然体でボサ・ノヴァにこだわり抜いた作品もそう多くはないのではないでしょうか。