前作「Alma Boa de Lugar Nenhum」でブラジル音楽界のピアノ奏者、アンドレ・メマーリやチアゴ・コスタら7人の参加を仰いだピアノと声のアルバムを、そして
前々作ではチェロ奏者マリオ・マンガと詩的な佇まいのアルバムを発表、馬のお面を被ったりヒッチコック調の髪を断髪したり、目が離せないクリチーバ出身の奇才、カルロス・カレカ。その異彩を放つコンポージングのセンスが注目を浴びていることは、ダニエラ・アルカルピやテレボッサがその曲を採り上げてアルバム中でフィーチャーしていることでも判ります。さて今作のテーマは「メイド・イン・チャイナ」。細野晴臣「泰安洋行」を思わせるエキゾチックなオリエンタル音階に載せ、クレズマー調の生楽器アンサンブルに、オルタネイティヴィティが際立つ現在進行形のMPBサウンド、打ち込みとキッチュな音色が飛び交うエレポップに載せて"家電も何も中国製"と唄います。今回のこのポップでアグレッシヴなサウンドは、アンドレ・アブジャムハなどの仕事で知られる、カレカから見ても勿論下の世代の気鋭プロデューサー - マルシオ・ニグロによるもの。テクノロジーとチアゴ・ビッグ・ハベーロ(ダニ・グルジェルの夫)のdrs など巧みなプレイが折り重なり、聴けば聴く程面白い音楽作品となっております。前作でカレカがコンポーズ、ゲストのシコ・ブアルキが唄った"Minha Musica" に対し、シコ・ブアルキは近作アルバムの中でこの曲にインスピレーションを得たという唄を盗まれた男の話 "Rubato"を発表 、カレカは中国製製品への批判を込めて本アルバムのタイトル曲を作る、というように豊富な詩的エッセンスを持つ音楽家同士の往復書簡という意味も本作品に込められています。