鬱蒼と草葉生い茂る森の冷ややかに澄んだ空気を思わせる、唄・ギターとヴァイオリンにざわめくパーカッションで作ったメランコリアの唄世界。
'80年サン・ファン生まれでメンドーサに居を置くフアン・パブロ・ディ・チェーザレ(西語読みだとセーサレ)はフォルクローレを基盤にギターと唄で自身の楽曲を紡ぎ出すシンガー・ソングライター。ポストロック的な表現も採りいれたリモンというグループでも活動しています。ソロ名義で初となる本アルバムでは、ヴァイオリンのビクトル・シリオーネと共に編曲したシンプルな自作のアコースティック音楽集であるというのと、人生で最も衝撃を受けたという映画『コヤニスカッツィ/平衡を失った世界』をイメージして作られたという面もあります。生ギターのアルペジオやヴァイオリンの対旋律、チャランゴやケーナも曲に因って演奏されるオーガニックなフォルクローレのリズムに対比するように、曲毎に逆回転やホース、効果音的なハープにシンセ、たき火の音なども持ちこんでの現代的な演出がされています。ショート・フィルムの仕事なども手掛けるフアン・パブロ・ディ・チェーザレの紡ぐ唄は哀愁を帯びた原風景を描き出しつつも、どこか桃源郷へと旅するようにロマンに溢れています。首都ブエノス・アイレスで同じように弦楽とのアンサンブルを試みるS.S.W.
ルシオ・マンテルと共演したりも。