風のクロニクル(年代記)- 4作目となる今作のテーマがこれ。リサンドロが生まれ育ったパタゴニア地方の代名詞とも云える”強い風"、この風がどのように生まれ、何を運び、何処へ行くのか。第一章となるdisc-1 では前作までと同様に兄妹のロシオ・アリスティムーニョを含む自身のバンド - Azules Turquesas (ターコイズ・ブルー)と一緒に、エレクトロニクスやチェロなどのストリングスを携え、アルゼンチン・フォルクローレのリズムをドラムキットでモダンに再解釈したリズムを交え、繊細で豊かな感受性と共に風の物語を描き出していきます。ブエノス・アイレス都市圏の窓から映る夏の終わりの風景、個人的体験を書き記しているというコンピューターの中に封印されたアイディアを解き放ち作られたと云います。ハイブリッドながら大自然の煌めきを感じさせるポエティックな世界観、これが一陣の風となり辺りを巻き込んで行く様が圧巻。録音が行われたシルコ・ビート・スタジオの主 - フィト・パエスが劇的に美しいワルツ"desprender del sur" で共演 (p, vo)。第二章となる disc-2 ではスペイン・ガリシア地方ビゴに在る家に於いて、リサンドロひとりがマイクロフォンに向かいアコースティックな多重録音を敢行、冬の終わりに地中海の近くで見た風景を宅録の手法で描き出しています。VJを入れて一人でのパフォーマンスをすることもあるリサンドロ・アリスティムーニョのパフォーマンスの側面を見ることができます。一章から二章に掛けて、季節風に後押しされた渡り鳥となってメランコリックな風景画を音で描写、こちらの”もう一つの揺りかごの唄”ではスペインで活動するミュージシャンのキケ・ゴンサレスが参加(p, vo)、まどろむような優しいララバイをデュエットしています。一章、二章、と環境を変えながらも統一されたコンセプトの中で風時記としての物語を紡ぎ出すことに成功しているリサンドロ・アリスティムーニョ31歳。やはりスペイン語圏のみならず世界が注目するに値する素晴らしいミュージシャンだな、と思います。